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第9話 元カノと部活は不調街道まっしぐら その3


「もうみんな限界だし今日はここまでにしようか」




 俺のその声にコクコクと頷く部員たち。


 いつもなら返事がないと注意するところだが、今日は特にそういう事は言わない。


 なにせ全員(ちとせと俺を含む)揃ってまともに座るのさえきつい状況である。


 それもそのはず、4時間ぶっ続けで練習していたせいで全員がもはや生きる屍なのだ。




 




「そこちょっと遅いぞ!」


「今度は早い!タイミング合わせる!」


「回転数が足りてない。あともう半回転」


「腰を落とせ。俺くらいまで落とすんだ。高さがバラバラじゃカッコ悪いぞ」




 この4時間屋上で響き続けたのは、俺の声だ。


 自分も踊りつつ、矢継ぎ早に指導するのは難しい。


 特に、本番は向かい合い、指揮を振りながらである以上どうしても振り付けは優しめになる。


 とは言えど、向かい合ってるのをいいことに踊りながら部員たちの動きをチェックするとなると、並大抵の人間はこなせない。


 実際問題、だいぶ疲労が蓄積してきているのが自分でもわかる。


 ただし、確実にその実力は上がってきており、この調子なら今回もかなりのパフォーマンスができそうである。




「Grip&Break down!!に関してはもうちょいだな。一番の難関はサビの部分だけど、そこは今のところは最低限のラインはクリア。ただ、間奏部を中心にまだまだ練習が必要なところがあるから、そこを完成させてからさらなる難易度アップに繋げるつもり。MEGALOVANIAはもとから難しいのはわかってる。ただ、君たちなら出来るはずだと俺は思ってるし、実際今日一日でそこそこ完成してきた。このまま頑張ろう。これで困るのが今日の部分ができなくなること。だから、必ず復習すること。同じことをもう1回やるのは嫌だからな」


「はい!」


「よし。じゃあ午後も頑張ってくれ。それじゃまた明日」




 そう言うとちとせと二人で更衣室に寄って着替え、音楽準備室を目指す。


 音楽準備室は楽譜などの保管庫と俺の昼食スペースを兼ねており、幹部会もここでやることが多い。


 最近はちとせも一緒に食べることもあるが、基本は一人で食べている。


 今日はちとせも当然のようについてきていることから分かる通り、一緒に食べるようだ。


 荷物を一通り置くと、すでに開始時刻まで20分を切っており、ぱっぱとおなかに詰め込んでいく。


 なんせ今日のお弁当は二人で作ってるし、おかずに関してはできたてを朝食で食べてるのだ。


 無言でさっさと食べ終えると速やかに音楽室に入り、いつもの椅子に座る。




 5分ほど経ち、13:30を知らせるチャイムが鳴ると同時に部長がスッと立ち。




「午後の練習始めるよ。起立」




 ザッと部員が立つのに合わせ、俺も立つ。




「午後は井野マネの指導です。あまり演奏会まで時間がありません。しっかりやりましょう」


「はい!」


「じゃあ井野くん、よろしく」


「分かりました。じゃあ始めますよ。先に言っておきますが、いつも行っている通り、昨日までの部分ができない人は廊下で出来るようになるまで個人練習していただきます。じゃあ今日もMEGALOVANIAから。ああ、先にこれだけは知らせておきましょうかね、部長、例のプリント配ってください」


「はいよ」




 そう言って部長が配りだしたのは、今回の演奏会の曲目である。


 大きく2部にわけ、1部はクラシック+コンクールということで指導は顧問。


 2部は現代の音楽ということで、俺が担当する。


 MCは俺とちとせ。




「1部は先生に決めていただきました。私は特に関係してないのでそこはすっ飛ばします。2部は俺が指揮します。まずダンス部とコラボでGrip&Break down!!とMEGALOVANIA。ちなみに次回はNo life queenと何かもう1曲です。その後千本桜、コナンのテーマ、打打打打打打打打打打、でトーキングタイムがあってナイト・オブ・ナイツ、紅蓮の弓矢、残響散歌、月のワルツ。そのあとアンコールでドヴォルザークの新世界第4楽章とsummer、そしてチルノのパーフェクトさんすう教室。アンコールは私がピアノで参戦します」


「はい」


「全て難易度は高いです。実はいくつか練習曲として突っ込んでありますし、昨年にやってるものもあります。もともと曲順以外は決まってたので、一通り基礎は完成してるはずですし。今回の新曲はMEGALOVANIAと残響散歌、summer、そしてチルノのパーフェクトさんすう教室ですが、特にsummerは簡単ですから大丈夫です。本音を言うとThe Nightsもやりたかったけど、時間がないので辞めました。明日からは通しでいきますので覚悟しておいてください」


「はいっ!」


「じゃあ始めますよ。ワン、ツー、ワンツースリーフォー」




 俺の指揮に合わせて飛び出したのは、俺の予想を遥かに上回るレベルの高い演奏だった。

きょうのキャラ紹介




小倉涼乃 (こくら すずの)JR山陽新幹線




 吹奏楽部部長。担当はトランペット。その腕前は物凄く、海外の音大からスカウトが来るほど。将来の夢はトランペット吹き。実は数少ない吹奏楽部生まれのカップルで、相手は3年生代表で副部長の三原和久(みはら かずひさ、次回紹介)。学校では赤の他人を演じており、今のところ誰にも知られていない。友香の親友で、政信に対しては全体では丁寧に話すが、幹部のみのときや指導時はタメ口でも良いとしている。幹部のみだとタメ口じゃないと許されない。ちとせのことはお気に入り。涼乃曰く、「妹みたい」。





 ひとこと




 最近「はたらく魔王さま!」と「艦これ」のアニメを見てドハマリしました。それで気づいてしまったのが、吹部部長の名前がまさかの登場キャラの名前と一致したということ(はたらく魔王さまに同じ読みのキャラが出てきます。漢字は違うけど)。




 艦これは金剛がお気に入りです。


新作の公開は9月下旬、9月上旬頃より不定期で列車旅のSSを公開します。

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