第8話 元カノと部活は不調街道まっしぐら その2
さて、俺たちの乗った電車はこないだ車に激突したのにもかかわらず、特急もかくやというスピードで外房線を駆け抜けていくわけであるが。
どんどん人が乗ってきて鎌取につく頃には大混雑で人間の缶詰め状態である。
こんな状態で蘇我で降りれるのか心配になるが、それは杞憂に終わった。
そりゃそうだ、あんだけ「この電車は蘇我を出ますと新木場まで30分ほどドアが開きません。少しでも体調に不安がある方はご利用をお控えください」などと言われたら降りる人も多いというものだ。
車内でも言われ、ホームでも言われ、それでも乗るのはそこそこの猛者だけである。
結果、蘇我始発の各駅停車もそこそこの混雑で蘇我駅を発車する。
発車から数分、わずか2駅で最寄りの稲毛海岸に到着していた。
そこから炎天下の中歩くこと数分、無事学校に到着した。
すでに音が聞こえており、一瞬音楽室へ行きかけたが、まずはダンスのほうである。
お互いに更衣室へ立ち寄り、再び廊下で出会う。
が、俺はちとせの姿を見たとたんに速攻目をそらす。
「ん?どうしてそんなにいきなり目をそらすの?」
「まずその姿をよく考えろ。お前は着やせすんだからもうちょい気を付けたほうが良いと思う。あと吹部にその格好で行くのは駄目だから」
ただでさえものすごく着やせしても目立ってる二つの大きな果実が薄い服1枚と下着のみとなればその主張はものすごいわけで。
それから目線を離そうとすれば露骨にそらすしかないわけで。
と、更衣室に戻ったちとせが戻ってきたのだが、あの主張が冬服着用時ほどに戻っている。
おそらく何らかの処置を施したのだろうが、それに触れようとする前にふと時計を見ればもう既に開始時刻はすぐそば。
どうやらちとせも気づいたらしく、顔を見合わせるとすぐさま二人そろって屋上へ猛ダッシュ。
結果。
「井野、今日はいつもと違ってぎりぎりだな。何かあったのか?」
「何も。それより、今日は午前中はみっちりやるぞ。覚悟はよろしいか?」
「ああ、昨日のうちに言ってたからな。部員全員に共有済みだ」
「サンキュ。年上にため口ってのも慣れんけどな」
俺に話しかけてきたのは部長の桜井先輩。
3年生で、本来は敬語を使うべきなのだが、指導者たるもの口調が丁寧であってはならないという彼女の信念の影響でここでは常にタメ口である。
吹部に関しては、指導時のみタメ口になることが許されているが、幹部のみの場合はタメ口である。
うちの学校のダンス部は男女比がえらく偏っており、男子は俺を含めて2名。
もうひとり(唯一の男子)は武弥なので、部活で芽生える友情というのには未だに遭遇できてない。
「とにかく、まずは定期演奏会に向けた練習から行くぞ。基本事項は顧問の先生にお願いしているが、それでもなお時間が足りない。だから今日も詰め込むぞ」
「はい!」
「じゃあまずはGrip&Break down!!から。そのあとMEGALOVANIAな」
「今日中にそこまでできるか?」
「毎日両方やんの。一曲だけじゃ飽きるでしょ」
こうして毎夏恒例鬼の練習地獄が始まった。
登場人物紹介
桜井友香 (さくらい ともか) 近鉄大阪線から
ダンス部部長。指導者はたとえ指導相手が歳上であろうとタメ口であるべきというスタンスの人物。練習は厳しいが、自分にはもっと厳しいのと、部員を思いやっての行動に尊敬されている。恋人は「ダンス」(本人談)で、ダンス一筋8年。その努力が認められ、とある有名アイドルグループのバックダンサーとしてスカウトされた。卒業と同時になる予定。




