表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/69

第5話 ふたりっきりの放課後 その4


 それから程なくして。

 車掌による人数確認と乗り換え客の数の確認が済み。

 応援の係員も到着し。


「それでは増2号車の皆様、増1号車の運転台より線路にお降りいただきます。お降りになられましたら、1号車方面へお歩きください。車両先頭部に係員がおります。係員の指示に従い上総一ノ宮駅までお歩きください」


 とはいえ車両の中には俺たちを含めて数名ほどしかおらず、あっという間に降りる順番が来てしまった。

 人生初となる乗務員室への立ち入り。

 そしておそらくほぼ確実に二度と無いであろう乗務員室から線路へ降りたうえでの線路上の歩行。

 期待に胸を高ぶらせながら(超不謹慎なのは自覚しているが)、慎重にはしごを降り線路に降り立つ。


 しばらく歩いていくと、パトカーや救急車が来ているのが見える。

 

「隣の線路の端の方をお歩きください。上総一ノ宮駅の手前の橋の部分からは橋の手前におります係員の指示に従って渡ってください」


 その指示を聞きながら線路の反対に渡り、歩いていく。

 そして車両の先頭部が見えた時、あまりの惨状に驚いた。


「こんなにひどかったのか。そりゃ歩くしかないな」


 ふつうの車にぶつかったようだが、車はひしゃげており、電車はスカートがなくなっており、また連結器などが大破している。

 幸いなことに車体部は見た感じ傷はないものの、いかんせん下がひどい。


 そんな惨状を横目に見つつしばらく歩き、係員の指示を聞きながら橋の上を渡り、上総一ノ宮駅のホームに着いた。

 2・3番線ホームの端っこの階段を登り、跨線橋を使って改札を目指す。


ピッ。ピッ。


 二人のSuicaを当てた音が鳴り、無事改札外にでたところで。


「「ふぅ〜」」


 二人同時にため息が漏れる。


「いや〜、意外と歩きづらかったね」

「石の上だしな。当たり前だけど足元ががたがたして歩きづらかったかもしれん。でもなんか楽しかったな」

「ふふっ、政信らしいね。とりあえずそろそろ閉店時間が近づいてきてるからスーパー行こっか?」

「そっか。じゃあちょっと早めに歩こう」





 その後。

 野菜やら肉やらをそこそこ買い込んだ俺達は、家までてくてく歩いて帰ってきた。


 ガチャリ、と鍵を開け荷物をおきつつリビングへ移動し、冷蔵庫に食材を詰めていく。

 一通り詰め込み終わったところでジュースを取り出してグラスに注ぎ。

 テーブルのいつもの席に座って一息つく。


「ふぅ、帰ってこれたな」

「だね。今日もお疲れ様、相変わらず部活では毒舌だったけど」

「だってさ、もう7月に入ったんだぞ。3週たったら定期演奏会だし、その2週後にはコンクールもある。しかも今回はその後にダンス部の方もあるし」

「そう言えばそうだったね。いつもダンス部と吹奏楽部に半分ずつ行ってるもんね」

「そう。どっちも一部の指導をしてるし、なんなら一緒に踊るし。ちとせも明日から俺とおんなじ感じで動くんだっけ?」

「そうそう。2年生代表になったけど、あくまで私は政信の抑え役みたいな感じで選ばれたし、ホントは今年は辞めてるはずだったしね。だからコンクール関係のときはある程度までやるけど、それ以上はやらないし、当然選ばれることもない」

「そう言えばそうだったな。でも演奏会系はほんとちゃんとやってくれててそこはちゃんとメリハリを持ってて嬉しいよ。ただ、明日から3週間くらいしか無いから結構ダンスはスパルタだよ?」

「でも一応基礎は大丈夫だったじゃん?」


 そう、実は吹奏楽部の前に基礎をチェックしていたのだ。

 基礎はできていたので、3週間あればギリではあるものの出来そうだ。


「まあギリギリだな。どっちにせよ明日からはスパルタだから今日はもう寝よう」


 ということで今日はお風呂に入って寝ることにした。


 電車のスカートというのは、車両の先頭部を前から見た時に、下の方にある覆いみたいなやつです。

 「電車 スカート」って検索すれば多分出てきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ