第1話 日常が壊れた日
初めの方は少し残酷な話が続きます。
その日、俺は最悪の場面を目撃した。
それも、俺には縁がないだろうと思っていた、絶対に見たくない場面に。
俺こと井野政信は、廊下を急ぎ歩いていた。
数年前から付き合っている彼女と待ち合わせて帰るため、待ち合わせ場所に急いでいた。
その途中で通った教室から、ふと聞き覚えのある声が聞こえてきた。
毎日聞いてる女子の声と男子の声。
確認する必要もなく、幼馴染で彼女の高山千春と、親友の小林邦彦だと分かる。
千春はすでに昇降口で待ってるはずだった。
耳をすませて二人の話を聞くことにする。
「千春、そっちはどう?気づかれた様子はある?」
「全然。気づかれないように振る舞ってるしね。あんな奴と付き合ってるなんてありえないって気付けないとか、バカなのかな?」
「馬鹿だから気づかないんだよ。千春の妹みたいにね。」
「あぁ、うちの妹もバカだからね。そっちも気づいてないでしょ。」
「ほんとそう。オレ達が付き合うために利用されてることに気づかないとか、ほんとバカすぎる。」
「マジで?やっぱうちの妹といい政信といいホントにバカだね。」
この会話から察することができるのは1つだけ。
すなわち、浮気である。
いや、もっとひどいだろう。
だって彼女等は
一瞬固まった後、俺は怒りで体が震えるのを感じた。
なんでこんなやつを好きになっていたのだろうか。
そっちがその気なら、こっちも容赦をするつもりはない。
とにかく、まずはさっさと家に帰る。
あんなクソ女と一緒に帰るとか、吐き気をこらえる自信がまったくない。
『用事が出来たから先に帰る。明日の朝も早く行くから、ごめんね。』
人を利用したクソ女に一通メッセージを送ると、そそくさと帰宅すると同時に、電話を掛ける。
「もしもし?お姉ちゃんになんかあった?」
電話相手は千春の妹、ちとせ。
姉とそっくりな美貌とプロポーションをもつ美少女で邦彦の彼女。
「まあちょっと色々あったんだよ。どうしても話しておかなきゃいけないことが出来てね。」
「ふーん。お姉ちゃん、今日遅くなるって連絡きたし、邦彦も遅くなるみたいだから、うちくる?電話越しより話しやすいでしょ。」
「じゃあそうさせてもらうわ。」
千春とちとせの家はすぐ隣だから、すぐに着ける。
あれだけのことをしてくれたからな、ちとせと二人で千春と邦彦を徹底的に潰してやる。
お前らがしでかしたことがどれだけヤバいことなのか、身を持って知らせてやる。
というわけで、ちとせの家にやってきた。
「いらっしゃい。お姉ちゃんはまだ帰ってこないから急がなくてもいいのに。」
「少しでも早く話したかったからな、つい急いできちゃった。」
「そんなに急なこと?」
「そうだ。だってあいつ、浮気しやがったからな。」
「は……?浮気?お姉ちゃんが?誰と?」
「長くなりそうだし、上がっていいか?玄関で話す内容じゃないと思うし。」
「ん。とりあえず上がって。私の部屋でいいよね?」
「どこでもいいぞ。」
玄関で事実を少し喋った後、俺はちとせの部屋に入った。
久しぶりのちとせの部屋は、昔と変わらず可愛らしいデザインでまとめられている。
部屋に入ってちとせと向かい合う。
「で、浮気って誰と?」
「邦彦としてる。学校で堂々とやってた。」
それを聞いたちとせは目を見開くと、一瞬で顔に影がさし。
その口から漏れたのは。
「は?」
いままでに聞いたことのない、とてつもなくドスの利いた低い怨嗟の声だった。
1話目は短めです。
別に寝取られたいわけではないです。
学生なので、更新は週に1話ずつを予定しています。
期間が開くときもあるかもです。
次は5月6日金曜日に投稿します。
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追伸(2022年4月30日)
名前が一部間違ってました。
訂正しておきました。