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社会不適合者のための哲学  作者: 最内翔
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理想の普通と不良品の自分

 この本の題名に「社会不適合者」という単語が入っている。

 今回はそれについて論じていく。


 社会不適合者といえばどんな人物を思い浮かべるだろうか?

 "ひきこもり""無職40歳""鬱で退職"

 社会適合者といえばどんな人物を思い浮かべるだろうか?

 "入社30年勤めあげた部長""家庭とそれなりの収入を得たサラリーマン""趣味と仕事の両立"


 理由は後述するが、社長とかウン千万稼いでる営業マンとかはここでは対比に出していない。

 ともかく、例に挙げた両者の違いは何から生まれたのか。

 言うまでもなく、社会に適合できたか否かだ。

 ところで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 エヴァンゲリオンの搭乗者として、古代魔法の使い手として、28.0の靴の履き手として、適合出来なかったら悪なのか?

 考えてみればおかしな話じゃないか。

 なんで適合しなかったからって、社会が求めてる形と自分の生来の気質が一致してなかったからって責められなければならないのか。

 しかもこれは、単に「だから適合できなくてもいい」で済む話じゃない。

 それを悪だと言うというからには、根底に「自分の生来の気質から社会が求めている形に矯正しなければならない」という前提があるということになるからだ。

 その矯正は誰が求めている事だ? 少なくとも私自身では無いはずだ。

 それを求めているのは雇い主であり、その雇い主を肯定した株主や国家だ。

 あくまで社会不適合者というのは「使う側にとって都合が悪い人材」を意味しており、それ以上でもそれ以下でもあるべきではない。

 私や君の全人格を否定する物では決してあってはいけないのだ。


 じゃあ、今度は社会適合者について考えてみよう。

 彼らは会社の一員として、そのスムーズな運営のために身を粉にすることを是としている。

 彼らは社会の一員として、争わず番いを見つけ、次世代を育むことを是としている。

 いや、嘘を言った。彼らの大部分はそれらを是としているのではなく、「疑っていない」。

 まぁいい、そんな彼ら彼女ら私達の理想像はどんな人物だろうか。


 社交的で、仕事が出来て、企業に正社員として勤めていて、頼りになって、人と争わず、笑わせることが出来て、恋人が居て、友人も何人もいる人


 私の描いていた理想の普通はこんな感じだった。

 ここまで出来てやっと一人前だと、そうなれるよう努めて自分を律していかなければならないと考えていた。

 そのためには今の自分には欠けていたり、逆に余分だったりするものが多すぎると思った。

 欠けているのは、自信、経験、資金、人脈、後ろ盾

 余分なもの怠け癖、利己的な欲望、怒り、肉欲、嫉妬、下心等々。

 そして足りない物を欲しいと泣き喚き持っている人に嫉妬し、そんな醜い自分に自己嫌悪した。

 そんな経験は君には無いだろうか?


 この健全さへの憧れはいずれ、完璧な偶像への憧れにすり替えられることさえある。

 自分の中で嫌という程醜さは見せつけられているからこそ、それらを一切見せない、或いはあったとしてもその発現が清らかであるものへの憧れが生まれる。

 聖母マリア信仰であったり、仏様であったり、アニメのキャラであったり、アイドルであったり。

 そしてそうやって憧れるが故に、意識的になるべく目を瞑り見ないようにする。

 そして万一その醜さが目に映れば裏切られたとばかりに猛烈に批判する。


 自分の中で発生する醜さもなるべく目を瞑ろうとする。

 無かった事にしようと心の押し入れの中に仕舞い込む。たまに溢れ出してきては何度も仕舞い込む。押し殺す。

 そうやって外側から見える部分は良い人を保つ。

 そうしないと皆から批難されるから。自分が毎回やりそうになるように。


 それを続けていくうちにやがて、"元々そういう醜い部分が見えない"ことが普通当たり前健全常識であり、醜い部分を見せるのは非常識大顰蹙モノであり、それを疑う者は異端者と見られるようになる。

 そういった事なかれ至上主義が常識となった世界で何が起こったか。


 それがこの"自分が分からない部品が次々に不調を起こす今"だと考えている。


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