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社会不適合者のための哲学  作者: 最内翔
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正義とは何か

私の哲学を語っていくにあたって、記念すべき第一話はこれしかないと思う。

そう、「正義」とは何かだ。

いきなり大きな議題で失笑するかもしれないが、様々な考えの根底に関わってくるので、最初に語るべきだろう。


まずは君の考えを聞かせてくれ。


「人を守り、傷つけない事」

「堂々と胸を張れる事」


こんな感じかもしれない。

それを否定するつもりは無いが、私の考えは違う。


「多くの人の支持を得られること」


これだと思っている。



この理由を語るために、一つの仮定を立てよう。よく聞く言葉だ。


「正義は必ず勝つ」


素晴らしい言葉だね。そして私にとっては真実だと思える。

何故なら勝った者がルールを作り、ルールが正義を作っていくのだから。

勿論これは未だ仮定に過ぎず、間違いないと証明されていない。

ただ少なくとも私にとっては根拠たり得る真実だからこのまま論を進めていく。


"正義は必ず勝つ"のだと仮定すると、逆説的に正義は勝てなければ正義ではない。

ならどうすれば勝てるのか。それは"数"を集めることだ。


魔法やスキル制のファンタジー世界と現実世界を比べた時、最も大きな差異の一つは「人一人に出来ることの幅が非常に小さい」ことだと思う。

どれだけ戦闘訓練を受けた人であれ無手で100人に同時に囲まれれば負けるだろうし、どんな天才であれ電気を理解しただけでは世界は変わらない。

戦争では突出した技量を持つ一兵卒より指揮官の方が影響力があるし、天才の発明も教えられ工業化されて多くの人に行き渡ってこそ世界が進む。

たった一人の魔法で千人を殺すことは出来ないし、テレパシーであらゆる人の脳に直接知識を叩き込むことも出来ない。


人が身体能力で劣るライオンに何故勝てるか。

言葉によって連携を取り2次元的に強さを増し、書物によって過去の人々の力を借りて3次元的に力を増すことが出来るからだ。

例えばアサルトライフルという武器を例に考えてみると、あれもまた技術の結晶であることは言うまでもない。

即ち長年の人々の知恵が積み重なった理論と、それを長期間に渡って現実世界に影響を及ぼせる道具にするため製品化するために働いた職人の、或いは組み上げるために作成された機械の結晶。

過去現在の何千何万といった人々の力をアサルトライフルという道具で形にしているともいえる。

何が言いたいかと言うと、あらゆる道具もたった一人の力で作れるものではなく、過去現在の数多の人の力を圧縮したものだということだ。


話を戻して、人ひとりだけで出来ることに大差はない。

たった百人も集めれば、一人の影響力なんて誤差の範囲だ。

であるから、勝つために必要なのはより大きな人数だ。

局所的な逆転などはあるが、大局的にはより大きい人数を従えた者が力を持ち、正義となる。


では次に、どうすれば大きい人数を従える事が出来るかだ。

幾つか手段はあるがまず第一に挙がるのは"賛同してもらい、従って貰う"ことだろう。

他にも"脅し"や"洗脳"とかもあるが、不安定だったりデメリットが大きいので一先ず置いておく。

"賛同してもらい、従って貰う"ために必要なのは、利益や感情で納得してもらうことだ。

即ち相手にとってのプラスになることを示すことだ。

まとめると、「多くの人にプラスを示すことで多くの人の支持を得て、その数を束ねた者こそが力を持ち、勝つから正義だ」ということだ。



どうだろう、何を思っただろうか。


「所々強引な理論を使って、当たり前のこと言ってるだけじゃん」


そんな風に思っているかもしれない。

だが待って欲しい。本当に今回語りたかったのは次のことなのだ。


"絶対不変の、超越的な正義は無い"


先程の正義とは何かを振り返って欲しい。

その正義とはあくまで人由来のものであることに気付くだろうか。

多くの人が「それが良い」と言うから正義とされているだけだとするなら、


"もし多くの人が間違った考えを良い物だと思わされて、言ってしまっているとしたら?"



少し、空恐ろしく思えてこないかな?

絶対的に正しいと教えられてきた今君が持つ価値観が、絶対的なものではないとするなら、何を根拠に何を信じて生きていけばいいのか……


さて、最後に有名な言葉を引用して、今回はここで区切ろう。


"神は死んだ"

  フリードリヒ・ニーチェ

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