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エピローグ(1)

第29話 ウチの表情

 なんだか、ウチを取り巻く状況が変わってきた気がする。

 なんか、居心地がようなった。


 この間、クローバさんに


「……テスカさん。とてもいい笑顔で笑うようになられましたね」


 言われてからや。


 そう言われてから、なんだか状況が変わってきた気がする。


 いい笑顔の自覚は無いんやけどな。


 まぁ、仏頂面して怒りを振りまいていても、状況は良くなれへん。

 それくらいはウチにかて分かるわ。



 まぁ、それはそれとして。



 今、ウチはストレッチをしていた。


 もうすぐ、寺子屋で体育祭があるからや。


 ウチ、別に運動得意やないけど、最近ノラハンターで色々やってよく動いているから、いつもよりはいい成績が出るかもしれへん。

 別に1位取れへんでもええねん。

 普段の自分より、いい成績を出せるかどうか。


 そこが重要なんや。



 ウチがそんなことを思いながら、座って前屈運動をしているときやった。


「テスカ、入るで」


 オカンが襖をノックして、ウチの部屋に入ってきた。


「オカン、何?」


 ウチがストレッチを止めて、顔を上げると


「……最近、アンタ、表情が明かるなってきたな」


「……そうなん?」


 いきなり、褒められた。

 そんなん言われてもなー。自分じゃ自覚あれへんしなー。


「前のアンタは、なんかいつも怒っとったよ。それが最近、のうなってきたように思う」


 そっか……


 でもそれは、ウチと友達になってくれはったヒカリさんや、気さくに話しかけてくれはるヨシミさんのおかげかもしれへんね。

 あの人らに、世の中、敵ばかりやないって教えてもろたから……。


 ウチが、オカンの言葉に深く染み入っていると。


 オカンは


「テスカ、明後日の体育祭の事やけど」


 本題を切り出した。

 ウチの表情の話はメインやなかったんやね。


 ウチとしては……


「店忙しいんやろ? 別にええよ」


 こう答える心境にはなっとった。


 寺子屋低学年のときは、よくオカンが体育祭に来てくれた。


 でも、最近はそういかへんくて。

 来てくれへん事が続いとった。


 最初は悲しかったけど、ウチもそれがウチの事情なんや、おもて慣れてきて。

 今ではこの通り、平気や。


 やったんやけど……


「そんなこと言わんと」


 オカンが、笑顔でウチの言葉を否定したんや。


 えっと……


「オカン、このまんまやアカンおもたんや。だから、今度のテスカの体育祭に絶対に行くことにした」


 え……


 ウチはちょっと、信じられへんかったけど……

 わざわざそんなことを言ってくれたオカンが、ちょっと嬉しかった。


「絶対に行くからな」


「まぁ、無理せんでええから。店優先でホントええから」


 ウチは内心の照れと喜びを隠すように、無理せんでええ、を続けた。


 ホントはメチャメチャ嬉しかったんやけどな。

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