第55話 テッドの新たな問題。
テッドを鍛えられる猶予が1週間しかないと言われたキヨロスは残念がる。
厳しい事を言ってもテッドのポテンシャルの高さに感動していて限界まで育ててやりたいと思っていたのだ。
「それだけ短いとやれても4年前のツネノリくらいのレベルだよ?」
「致し方ない、それでも超神の足止めにはなる」
地球の神は渋い表情でそう言った。
「一体何が問題なの?」
キヨロスはテッドの問題点が気になっていた。それさえ無ければテッドを満足行くまで鍛える事が可能だからだ。
「テッドにも伝えよう。
もしかするとテッドはわかった上で犠牲になると言うのかも知れない」
「犠牲?」と聞いたキヨロスの顔はとても怖いものだった。
目覚めたテッドは状況を理解して少なからず悔しがる。
「悔しがる事なんてないよ」
テッドの顔を見て話すキヨロスは先程までと何かが違っていてテッドは驚いてしまう。
「テッド、問題が発生した。
ここでの修行は1週間までにしてサルディニスに向かってもらう」
地球の神の発言にテッドは驚いた。
「1週間?俺は1週間で強くなれるのか?」
「テッド、落ち着いて聞いてほしい。
その身体にある命を燃やして攻撃力に変える呪いが残っていて今も命を燃やし続けている。
そして「神の力」で補填した命は普通の人間なら3回の人生が送れるくらいの高威力な物だ。
だがそれでも1か月も保たない事が今の訓練で見えた」
「そうか」
なにも驚かなかったテッドに驚いたのはキヨロスだった。
「テッド?どうして落ち着いているの?」
「わかっていた。
今目覚めた時にまた内側に隙間が出来ていた。
ほんの少しでも俺にはわかった。
そしてそれなのにあなたに勝てなかった」
テッドが悔し気に下を見て呟く。
そのテッドの呪い「生命犠牲強化」はとてつもない代物だった。
大体だが、人の8~10年の寿命を1日で使い切ってしまうような代物なのだ。
サルディニスの平均寿命は70~80歳。
そう考えればテッドの寿命はギリギリだったのだ。
そこに「神の力」で補填した命が3回の人生となると210~240年それでもテッドには1か月しかもたないのだ。
「いや、僕に勝てないのは仕方ないよ。
僕はどんな敵が出てきても良いように今も止まらずに強くなり続けているんだ。
それよりも地球の神、テッドをここで修行させないでサードに帰してあげれば神様が戻るまでは命が保たない?」
「テッドが生きている事がわかれば確実に超神がちょっかいを出しに来る。あの毒竜や人喰い鬼が相手で今のままでは直ぐに死んでしまう。
ギリギリの所まで鍛えてからサルディニスに戻してイィトの帰還を待った方がいい。
だがテッドよ。それよりも戦わずにここに居るという選択肢もある」
「それはしない。超神は俺が倒す」
テッドの意思は揺るがなかった。
何が何でも自分が超神を倒す。
その事しか考えていないのだ。
「死ぬかもよ?」
「構わない。
俺は超神が許せない。
あのままにしたら間違いなくサルディニスの人々が危険にさらされる」
テッドからは何者にも邪魔をさせないという気迫を感じる。
そしてキヨロスはこうなった人を止める事はしない。
嫌われ役になっても憎まれ役になってでも尊重するのだ。
「ふぅ…。そうやって自分を狙わせるの?」
「そうだ」
「地球の神?」
「仕方あるまい。1週間だけ鍛えてくれ。
時間にしたら4時間と言ったところだな」
「一瞬じゃなくて?」
「今、千歳は複製されたゼロガーデンで全てを見ている」
「そうだね。トキタマがチトセに着いて行っていて僕に逐一情報をくれているよ」
「見ているのか?」
「今、「意思の針」でチトセに何があったかを伝えているみたいだ」
「恐らく戻った千歳はゼロガーデンに向かう。
そこでテッドと会わせてやって欲しい」
「わかったよ。そう言えば地球の神は何個同時進行しているの?」
「大掛かりな作業が1つ、後は小さな用意とここに居る事で4つだ」
「大掛かりね…チトセに頼まれたから?」
「それもある」
「じゃあ僕からもよろしく頼むよ」
地球の神は少し笑うと「わかっている」と言って消えた。