第477話 私ってば余裕なかったみたいだ。
「…助かったよぉ」
「おう、暖かな力が流れてきた。
これがチトセを困らせる余剰の力なんだな
間に合って良かった」
ビリンさんがホッとした顔で私を見てそう言う。
「でさぁ…、黒父さん!仕込んだろ?」
ビリンさんは起き上がる黒さんを見ながらそう言った。
「バレたか…」
「バレバレだよ。父さんが俺を血だるまにしても母さん達も止めないんだもんな」
「え?もしかして…」
「1度目に倒した時、フィル母さんとジチ母さんは終わったと思っていた。
それなのに起きてきた後何も言わなかったのはジョマに装飾されたろ?」
「いつ気づいたんだい?」
「ジョマが現れてからだよ。
それまではチトセが俺のパートナーとして本気の気持ちがあって手出しするか見届けているんだと思ったんだ」
ビリンさんが説明すると黒さんは嬉しそうに微笑む。
「アンタ、本当に4年でいい男になれたね。チトセのお陰だね」
「本当、偉いわ。母として誇りに思います」
ビリンさんの説明を聞いてジチさんとフィルさんが嬉しそうにそう言った。
「チトセ、ビリンの傷は僕たちが治すかい?」
「ううん。私がやるよ。神如き力でビリンさんの傷を治す。
おまけで黒さんも治してあげる」
私の力でビリンさんと黒さんの怪我は一瞬で治る。
内心、いつでも逃がせる場所があると言うのはありがたい。
気軽に癒しの力も使える。
「あ、ジョマさ。一個聞いていい?」
「何ですか?」
「この「千歳の力」の満タンってどのくらい?」
「今の千歳様から貰った力なら3回分くらいですね」
「お札にしたら何枚分なの?」
「大体10枚分位は入りますね」
「すげぇ。ありがとうジョマ!」
「いいえ、アートの悪夢を倒してくださったお礼です」
私も気になった事があったのでジョマに聞く。
「ジョマ?いつそのアーティファクトを作ったの?」
「少し前、シエナ様達とフナルナに顔を出した日に京太郎と話し合いましたよ」
「え?その時からこの結果を予測していたの?」
「いえ、仮に今の仲にならなくても生涯の友としてビリン様は千歳様の力になってくれると思っていましたから」
「そんな…」
そんな所までお見通しだった事に私は驚くがビリンさんは「へへ、ジョマはわかってる〜」と嬉しそうにしている。
「千歳様は余程余裕がなかったようですね」
「へ?」
「神如き力・キャンセラーですか?あの力はうまくやれば1くらいで出せますよ?」
「え?」
「だってこの前の泥酔された日も一晩中寝ている間も発動させていたじゃありませんか?」
「あ…」
言われてみればそうだ…
「もう、それをわざわざ120の力で使うなんて無理しすぎですよ」
「…本当だね。私ってば余裕なかったみたいだ」
私がそう言うとジョマを含めて皆が笑う。
「さあビリン様、後は今お話しする相手とお話をなさってください。
千歳様はパートナーとしてビリン様の側にいてあげてくださいね」
「相手…、そうだな」
ビリンさんがリーンさんの前に行く。
私は少し下がった所で後ろをついて行く。