第462話 彼と彼女の仲。
ちとせに手を出せと言われたビリンはいつもの癖で手を出す。
その驚かないスムーズな仕草にちとせが驚く。
「慣れてるね?」
「手くらいはよく握ってるからな」
「…それ、実質付き合ってない?」
「そうか?んでこの手はどうなるんだ?」
ビリンは手を繋いだだけで付き合いと言う恋愛感はどうなんだろうと思いながら聞く。
「回復するんだよ。怪我したでしょ?【アーティファクト】」
ちとせの指にはまった回復の指輪でビリンの腕に出来た痣が引く。
「お、助かる」
「へへっ、これくらいはね」
助けになった事で気分が良くなるちとせ。
「よし、あと一戦だな」
「そうだね。次が問題だよね。悪魔かぁ…、セカンドでも倒したけどアートの夢の中だからきっと強いんだよね?」
「まあな。だが俺達なら勝てるって。あ、一度は死ぬかもしれない。試したい事とかあるからさ。それは許してくれよな?」
「はぁ?ダメでしょそんなの?」
「まあまあ、そこは寛大な心で許してくれって。なぁアート。多分次の悪魔を倒したらお前の悪夢も終わるだろ?」
「うん…」
「よし。じゃあ倒してやらないとな。チトセ、準備はいいか?」
「うぅ、怪我しないでよね」
「頑張る。チトセもよろしくな」
「うん」
2人が話終わると目の前に悪魔の影が出てくる。
「うわ…、やだやだ、何この威圧感。チトセ、セカンドの悪魔とどっちがヤバそうだ?」
「こっちだよ!来るよ!」
悪魔が巨体に似つかわしくない速度で殴りかかってくる。
「盾!【アーティファクト】」
ちとせがいち早く反応して盾を張るが盾ごとちとせが吹き飛ばされる。
ちとせはそれでもアートを離さない。
「アート!ごめんね怖かったよね!気をつけるね!」
アートは殴り飛ばされたショックから泣き始める。
「アート!お前の涙は俺とチトセで止めるからな!」
ビリンはそう言って悪魔に斬りかかる。
斬れない訳では無いが硬い外皮、そして亡霊騎士や毒竜以上の威圧感。
そして巨体から超速度で振り抜かれる拳。
辛うじてビリンは当たらないが勝ち目が薄い。
だが諦めずに暫く瞬間移動も織り交ぜながら斬り刻み、ちとせも光の剣で援護をする。
ダメージが蓄積して行くと元の悪魔同様に体色が変わっていき、漆黒の影が徐々に薄くなっていく。
「…おのれ…国賊め…我が力を喰らえ…」と突然悪魔が口を開く。
ビリンはその瞬間に冷たいものが背中を走るのを感じた。
「マズい!チトセ!前方に張れるだけ盾を張れ!」
ちとせもセカンドの経験から悪魔の攻撃があの閃光爆裂だと理解して「千歳盾!【アーティファクト】!」と言う。
「チトセ!一歩下がれ!試す!俺が間に入る!」
「え?」
咄嗟に言われた通り後ろに下がるちとせと盾の間にビリンが入る。
「ビリンさん?」
ビリンはちとせの方を向く形で悪魔の閃光爆裂に備える。
「【アーティファクト】【アーティファクト】【アーティファクト】」
三連発。
二発目まではちとせの盾で防げたが三発目には盾が全て突破される。
ビリンは咄嗟にちとせに抱きついて閃光爆裂からちとせとアートを守る。
「チトセ!無事…ぐぁぁぁぁっ!」
「ビリンさん!?」
ビリンの背中は焼けただれて血塗れになっていた。
そうしながら悪魔を見ると放出後の硬直なのか動かずに居た。
「くそ…、やっぱり防げないか。アート、やり直すから戻してくれ。あと少し話す時間をくれ」
「…うん」
アートの声でビリン達は悪魔との戦闘前に戻される。
ビリンの傷は無くなっていた。