第420話 うん…ごめんね。なんか私のせいかな?
「こうしてお茶を飲むのも久し振りだな」
「本当、千歳さんはもっとウチに来るべきです」
丸いテーブルを3人で囲むとお茶を飲みながらアーイさんとアンさんが話し始めた。
「あはは、ごめんね。私もアーイさんとアンさんに会いたかったからやっとこられてよかったよー」
私の顔を見たアンさんがこっそりパティシエさんに頼んでくれて、フルーツタルトの大きな奴を作ってくれてて3人で食べながらお茶を楽しむ。
「美味しいぃぃぃよぉ」
「ほら、ウチにくるとこんな良いことがあるんですよ?」
アンさんが微笑みながら言う。
「本当だよねぇ。ここの所ずーっと忙しくてさ」
私は溜まりに溜まったイベント達を説明する。
「まったく、ザンネとカーイが済まなかったな千歳」
「ううん。シエナさんとザンネさんの事は、私は導入だけだから後は何も知らないし手伝えて居ないんだよね」
「いや、千歳が居てくれたからこその結果だ。ありがとう」
アーイさんがそう言って私に微笑んでくれる。
その顔はやはり親子だけあってアンさんに似ている。…逆か…。
「そうだ。叔父上に言われましたが、千歳さんのドレス姿が可愛いから見てあげてくれって言われましたよ?」
「何ぃぃぃ…、恥ずかしいよぉ…」
思わず驚いて赤くなる私にアーイさんが「千歳、次はババロアだぞ?私達にその姿を見せてくれたらこの一番デコレーションが乗ったところを渡そう」と凛々しい顔で言う。
「えぇぇぇ…、でもきっとここで見せなくてもジョマが「装飾です!」って見せにくるよね?」
私がそう言うと「はい!やりますよ千歳様!」とジョマの声が聞こえてくる。うん。諦めよう。
「ババロア頂戴」
「ああ。食べてくれ!」
「美味しいですよ千歳さん」
私はジョマが撮ったように神如き力でカーイさんとデートをした時のワンピース姿とドレス姿の写真を出して渡すと反応を見ずにババロアに向かう。恥ずかしいのでリアクションは見ないようにする。
ババロアは甘すぎずにとても美味しい。
ルルお母さん程ではないがやはりスイーツは美味しい。
「うわぁ!千歳さんすごく綺麗、こっちも可愛い!」
「普段見ない黄色い服を着た千歳と言うのも良いではないか」
アンさんとアーイさんが私を褒めてくれる。
「恥ずかしいよぉ」
私は照れ隠しも込めてフルーツタルトをもう一切れ食べる。
「千歳さん、あと2枚は?」
「うぇ?」
「これは叔父上の奴ですよね。ビリンさんとの写真もありますよね」
「えぇぇぇ?アンさんはどこまで知ってるの?」
「いえ、叔父上とデートをした次の日にビリンさんともデートをした事までしか知りませんよ」
…本当かな?つい疑ってしまう。
「千歳、ほら今度はミルクレープだぞ?」
「…いただきます」
私はそう言いながらビリンさんに選んでもらったワンピースとドレスの写真を出す。
「凄い!こっちの方が千歳さんをキチンと見てるって写真です!」
「ああ、黄色は似合う色なだけでこっちの赤い写真はどちらもキチンと千歳を表している。それにこの安らいだ表情はビリンだから出せたものだな?
…本当に綺麗で愛らしい。綺麗だぞ千歳」
「照れるよう」と言ってアーイさんを見たら肩を震わせて声を出さずに大粒の涙を流しながら大泣きしていた。
「アーイさん!?どうしたの?」
「母上!?」
その姿に私とアンさんが驚く。
「済まない。済まない」
そう何度も言ってアーイさんが泣き続ける。
「アーイさん?」
「済まない…見苦しい姿を見せた」
少しして落ち着いたアーイさんが心配させないように笑ってくれる。
「母上、私少し席を外します。千歳さん、母上を任せていいですか?」
「うん…ごめんね。なんか私のせいかな?」
アンさんは「きっと違いますよ」と言って足早に部屋を出て行く。