第417話 私の指示もスムーズに受け取ってくれた。
二振りの小剣を見てビリンさんが驚いている。
「あ…小剣…」
「千歳に感謝しろよ?ペックの奴が使いもんにならねぇから複製してくれたんだぞ?」
「チトセ…ありがとう」
「まったく、はしゃいで無理しないでよね?後はこれルルお母さんから」
そう言って完全型の「暴風の腕輪」を渡す。
「…試したいって言ったら怒る?」
「ん!?…まあ一回なら覚悟してる。小剣はガイさんに頼みなよ」
「ガイ!最後の一回を頼むよ!」
「…わかった。本当に最後だからな」
ガイさんが半ば諦めながら覚悟を決めてくれる。
ドフお爺さんは小剣に癖を適用させてビリンさんに渡す。
「こっちが右用。こっちが左な。また緑と赤で印つけたから間違えんなよ?機能説明するから聞きながら使ってみろ」
「うん」
「まず一つ目、光の剣と盾は変えた。使ってみろ」
「【アーティファクト】」
そうすると緑色の光の剣が出る。
「緑色?」
「おう、ルルの人工アーティファクトにしたぞ。これで前よりは疲れなくなるだろ?盾も出してみろ」
「うん」
そうして出した盾は切っ先から盾が出る形だ。
「爆破の時に合わせて使えるようにしたから間違えんなよ」
「うん、これの切れ味とかって?」
「前よりねぇよ。流石に擬似アーティファクトの方が切れるからな。悔しけりゃ腕を磨くんだな」
「…はい」
ビリンさんがガッカリしているがマリオンさんがしっかり赤い擬似アーティファクトの剣でツネノリや私の黄色の剣に負けず劣らずの切れ味を発揮しているので何も言えない。
「爆破の発動位置も切っ先じゃなくしたから間違えんなよ」
「え!?」
「切っ先の30センチ先な。そうじゃねぇと光の盾と干渉するだろ?」
「そっか…」
「後は俺が考えて千歳が形にしてくれた機能がある。丁度ガク達が考えていた事と同じだからバッチリだぜ?格納と展開な」
「何それ?」
「論より証拠だよ。剣を手に持って口にしないでいいから意識しろ。しまうんだから格納だぜ?」
「うん…」
ビリンさんが念じると剣は瞬間移動して腰につけた鞘に入っていた。
「あ…これ…」
「おめぇの戦い方ってずっと両手に剣を持ってって感じじゃねぇだろ?使わない時はしまっておけって話だよ。出すときの展開もやってみな」
ビリンさんが念じると手の中に剣が入る。
「よし、出来たな。千歳!頼めるか?」
「うん。アーイさん、訓練内容を見たから私が真似るね」
私はドフお爺さんとビリンさんの会話中に追体験をして訓練内容を見たので自分で指示出しをする事にする。
「やれるか?」
「うん大丈夫だよ」
私がアーイさんから訓練を引き継ぐ。
「ガイさん、練習用のロングソードを構えて、ビリンさんを迎撃して。
ビリンさん、少し離れた所から始めて、迎撃を抜けて攻撃だからね?防御壁の突破は小剣使うんだから3秒だよ」
「わかったよ千歳さん」
「おう、やるぜ」
私が「始め」と言うと2人とも剣を構える。
「ビリンさん行くよ!
走って!姿勢を低くしながら剣を回避。
そのまま右手を抜刀!今は小剣!左を抜いて!こっちに光の剣!
乱打戦!
両手を光の剣!
タイミングは任せるから光の盾で攻撃を崩して!
そうだよ!
ガイさんの懐に入る!短い光の剣を意識して精製!
そう!それが30センチ!
光の盾も同時使用!盾の作りが甘いよ!イメージ崩すな!そこで爆破!もう一つの手でも爆破!後1秒!崩して!」
ビリンさんはアーイさんとの訓練があったから私の指示もスムーズに受け取ってくれた。
「よっしゃ!へへ、やったぜ。ありがとなガイ」
「いや。そこそこ本気だったんだがやられた」
ビリンさんがガイさんに握手をしてから私を見ると「チトセ、ナイス指示。あんがと」と笑う。
私は手を振って応える。
「小剣はそれでおしまい。格納しなよ」
「おう」
ビリンさんが念じたのだろう。手にあった小剣は鞘に戻っていた。