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サード ガーデン  作者: さんまぐ
おまけガーデン⑬~日本での2人。
388/492

第388話 私もああ言う顔をしているのかな?

流石に2日から一緒に居すぎたのであの後はさっさとお城に連れて行った。


帰り際に「別にもっとゆっくりして行けばいいのに」と言うお父さんに向かってビリンさんは、「ありがとうございます。でもあまり帰らないと家に居場所なくなりそうですし父さんからも「帰ってこないと思った」とか言われそうだから…」と言っていたのだが案の定お城に着くと王様は「なんだ、もう帰ってきたの?このまま帰ってこないかと思ったよ」と憎まれ口を叩いていた。


「またね」

「おう。ストレスが爆発する前に顔出せよな。いつでも待ってるからよ」


「うん、ありがとう」

そう言って別れた私はメリシアさんに頭を下げてウチに来てもらって料理を教えて貰う。


「私でいいの?」

「メリシアさんがいいの!」


そう言ってお父さんの材料費でハンバーグと料理本に載っていたほうれん草のおひたしを作ってお昼に出した。

メリシアさんの「私でいいの?」はメリシアさんは昔は料理が得意じゃなかったのだが、ツネノリに食べて貰うようになって凄く上達したのだ。なのに本人はまだまだと思っていてこういう事を言う。


「形以外はいいな」とお父さんからは言われた。確かにお父さんには実験で星形のつもりで作ったハンバーグだったが何処を間違えたんだか落としたトマトが潰れたみたいな形になっていた。


そしてその後で私の部屋でメリシアさんと2人きりになった時に私は泣いた。


「どうしたの?」

そう言いながら優しく抱きしめてくれるメリシアさんに、昨日思った事や感じた事と黒さんとキスをしてしまった事を後悔している事を伝えた。


「過去は消せない。

確かに千歳様は神の力もある。

もしかしたら神の世界で相談をしたら神々が千歳様の為に力を合わせてやり直しをさせてくれたり無かったことにしてくれるかもしれない。

でもそれをしたらきっといけないのよ」

「…うん」

メリシアさんの頼もしさと言ったらなかった。


「まあ奇跡の力で生き返らせて貰った私が言うのはおかしい話ね。

そして取り返しがつかない事で気付けたこともあるでしょ?」

「うん」


「ならその気持ちを大切にしてね。

相手の為にって無理したり先走るのは無しよ?」

「うん、気をつけるね」


「頼ってもらえて嬉しいわよ。本当に千歳様との距離が縮んだ気がする。

料理もお母様も千明お母様も上手なのに私なんだもの」

「それは考えたんだよ。

お母さんだと私は真面目になれないし、ルルお母さんだと甘えちゃうし、ツネノリはムカつくし、ジチさんは難しいし、マリオンさんは皆の話を聞くと教わっちゃダメな気するし、アーイさんは一緒に先生を探す羽目になりそうだし、メリシアさんのお父さんだとあらぬ方向に話が回りそうだから…」

「ふふ、確かにそれだと私になりますね」


その後は少しだけアレコレ話した。

ファーストのデートは楽しかったからまたやろうと言われた。


夕方になってメリシアさんが足りなくて寂しいツネノリがソワソワしていたので私は身を引いた。


ゼロガーデンに顔を出したメリシアさんを見た時の嬉しそうなツネノリの顔。

私もああ言う顔をしているのかな?



水曜日。

私は学校だが同時進行で意識だけをルルお母さんに向けておく。


9時半に家に来たビリンさんは「早くにすみません!待ちきれなくて!」と謝る。


「構わん。出来ておるぞ」

「ありがとうございます!」

ルルお母さんがテーブルに置いて置いたちょっとゴツい腕輪を渡す。

風の人工アーティファクトが10個付いていて、よく見ると穴が2個空いていた。

「今でも十分に「瞬きの靴」に追いつくと思う。だが慣れて物足りなくなったら来い。追加出来るからな」

「ありがとうございます!やった…!」

ビリンさんはガッツポーズをして喜ぶ。

丁度お父さんが降りてきてビリンさんを見て「勝てるといいな」と声をかける。


「はい!ルルさんのコレがあれば何とかなります!」

「なあ、お前はいつから意識していたんだ?」

「意識?」


「キヨロスの奴をいつから意識したんだ?」

「ああ…、4年…もうチトセがうちに来た日を過ぎたから5年前です。

あの日父さんに勝ったチトセを見て、チトセが父さんにガツガツと文句を言う姿を見て「チトセに惚れられるなら俺もあの場所に居なきゃダメなんだな」って思ったんです」

あの時の言葉が本気だったことに今更ながらに驚いてしまう。

あんな生意気な14歳の何処が良かったんだろうと気持ちを教えて貰っても不思議に思ってしまう。


「大丈夫だ。ビリンなら勝てる。

私の人工アーティファクトも身に付けたのだ。

負ける道理がない」


「はい!」

「だが差し違えても勝とうなどと思うでないぞ?差し違えなければ勝てぬのなら鍛え抜け。

怪我をすると千歳が怒るし悲しむからな」

「まったくだな。嫌われるぞ」


「頑張ります。じゃあ俺、コレで家まで帰ります!」

ビリンさんが嬉しそうに腕輪を右の二の腕に付けると国境の方角を見る。


ルルお母さんから授かったアーティファクトを使って城まで帰ると言い出すビリンさん。

とんでもない事を当たり前のように言う姿にお父さん達が驚く。


「マジかよ。何時間かかるんだ?」

「平気ですよ」


「そう言えば早かったがキヨロスに送って貰ったのか?」

「いえ、日の出の頃から瞬間移動と走り込みを合わせて来ました!」

…バカじゃないの?どれだけ離れていると思っているのよ?


「日の出って6時半過ぎだよな…。3時間でここまで来たのかよ…?

お前、無理するなよ。送ってやろうか?」


「いえ、慣らしながら帰ります!また来ます!いくぞ…【アーティファクト】」

「あ!忘れておった。それは普通に風として攻撃も防御も出来るからな!」

身体が微妙に浮かんだビリンさんにルルお母さんが声をかける。


「ありがとうございまーす!!」

ビリンさんはそんな呑気な事を言いながら高速移動で帰っていく。

傍目に見てわかるのだが、ルルお母さんは気合を入れて作り過ぎていて、油断すると首が折れそうな勢いが出ていた。

一の村を過ぎる頃に始めて10個全てを移動に使わないで1個か2個を防御に回すと気付いたビリンさんが風圧を何とかしながらお城に帰って行く。



そして風邪をひいていた。

汗だくで6時間も風に当たるからそうなるんだ。

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