第360話 最後の試験。
ところ変わってファーストガーデンにある三つ星ホテルの最上階。
これでもかと並んだ豪華な酒とつまみを目の前にしながら先程までニコニコとしていたカリンとマリカは真面目な顔でカーイを見ている。
そのカーイも真面目な表情だ。
「本当にここまで来てくれたんだね」
「うん。カーイさんはここまでほぼ満点」
「だから来たんだよ」
ソファに座りながら話すカリン達の声は軽い。
顔が真剣なのでギャップが凄い。
「ありがとう。じゃあまず君たちの考えを聞かせてくれないかい?」
「いいよ。でも大体はカーイさんも知ってると思うけどね」
「私達はね」
そう言ってカリンとマリカが始めた話は、やはりカーイを結婚相手として試したと言うものだった。
「チトセちゃんは苦手だったんだろうけど私達は旦那さんになる人から今日みたいにもてなして欲しかったんだよね」
「出来たら言わないでもわかってくれる人が嬉しいよね」
そしてその前段階として強い男を探していた。
「少なくともお父さんやお母さんが戦いを受けるくらいの強い人が良かったの」
「何でだい?」
「戦いと血が嫌いだからだよ」
「強い人なら例え戦っても怪我はしないよね?」
それらを見極める為にもカリン達が直接戦ってみた。
「2人はそんなに強いのに戦いが嫌いなんだね」
「うん。訓練や練習はまあいいかな」
「生まれた時からだから生活の一部だもんね」
兄や弟達を一蹴した実力、母を圧倒し、父に負けた程よい戦闘力。
そして3人でデートをした感触。
「それで僕はほぼ満点かい?」
「うん。ほぼね」
「ほぼだよ」
そう言ってようやくカリンとマリカは笑顔になる。
「ほぼの部分を聞いてもいいかい?」
「チトセちゃんと私達を比べすぎ。まあ昨日の今日で1日しか経ってないから仕方ないけどね」
「後はビリンからお肉をもらった時も不機嫌が顔に出るのが早かったよ」
そう、カーイは自分のエスコートが完璧だと思っていたのにビリンが手を回していてサプライズをしてきたことが気に食わなかった。
本人は顔に出したつもりはなかったがカリンとマリカには見破られていた。
「おっと、それでほぼかい?」
「うん。3人だけなら満点なのにね」
「勿体ない」
「じゃあ今度は僕からだよ。
仮に君たちがノースの妃になってくれた時、最低限王妃としての勉強、所作の練習なんかはついて回るし人前で今日みたいに甘えるのは難しくなる。
勿論僕も最大限守るけどどうだい?やれそうかい?」
「それこそ問題ないよ」
「どんとこい!」
笑顔で胸を張るカリンとマリカを見てカーイは嬉しい気持ちになる。
「へえ」
「だって私達がここまで甘え倒したのは」
「カーイさんが求めたからだもん」
「え?」
「最後のこの部屋とお酒におつまみは流石に悪いなって思うよね」
「うん。お母さんじゃないしね」
そう言って2人が笑うとカーイは目を丸くして笑う。
「僕は完敗だ。君達に心奪われてしまったよ」
「へへへ。でしょ?」
「カーイさんがこのまま若い姿で居られるなら結婚してもいいかもね」
「本当かい?」
「ずっと側にいてあげるよ」
「ただまだ試験は残ってるからね」
そう言って笑うがカリンとマリカの顔は真剣だ。
カーイもその意味がわからない程鈍感でも朴念仁でもない。
「…本当に良いのかい?」
「まあここまで試験を突破してるからいいかな?」
「うん。そのつもりだよ」
「先に何か食べるかい?」
「それは夜中でいいよ。今からお風呂に行く。カーイさんも入る?」
「そうだね。カーイさんも入ろう」
カーイは2人の少女に手を引かれて風呂に入る。




