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サード ガーデン  作者: さんまぐ
第三章・限られた命に向き合う少年。
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第36話 テッド絶体絶命。

後ろの音はリリオだった。

リリオが倒れ込んだのだ。


「リリオ!どうした!?」

テッドはリリオの元に駆け寄って抱きかかえる。

リリオの身体は熱かった。


「…ごめん。身体…重くて力が入らないの…」

「毒竜の毒か!?」


「だが毒液は紫色…あの毒竜は何も…」

戦神は辺りを見回して困惑をしている。



「ウヒャヒャヒャヒャ!ウッヒャー!!

残念だったな!

その毒竜はオラが作ったんだぜ!?

能力値は元の10倍、そして毒液は無色透明で無味無臭!

効果は絶大!

ウヒャヒャヒャヒャ、ウヒャヒャヒャヒャ!

キメラ!お前も弱ってきたろ?

でもお前は弱る事なく突然死ぬんだよ!ウッヒャー!!」


超神の嬉しそうな声が何処からともなく聞こえる。


「テッド!火のエレメントで毒ごと人喰い鬼を焼け!まずは毒の除去だ!リリオが死ぬぞ!」


毒は火で相殺出来る。

戦神の意見は間違っていない。

いや、正しいのだ。


だがテッドは動かない。


「テッド!?」

「ダメだ、俺の火では強すぎる。

威力が強すぎてリリオを傷つけかねない。

万一洞窟が崩落したらそれまでだ…」


ここで初めて戦神は気付いた。

テッドの祝福の威力は強い分なら命を燃やして更に強くなる。

限界はあるかもしれないが並大抵の威力ではないのだ。

だが弱い威力で出す事が出来ないのだ。



「…テッド…やってよ…、このままで…死ぬ…くらいなら……やって?」

リリオが弱った声でそう言う。



テッドは悩んだ。

万一に自身の火でリリオを傷つけたらと…

だがそれを見透かしたようなリリオの声が続く。


「私を…見殺しに…するの?…やってよ…、見殺し…に…しないで?」

「…本気か?」



「やって…」

リリオの弱々しいが意思は伝わる声に合わせてテッドは前を見る。

その目には怒りが宿っていた。

何故ここまで神と呼ばれる存在は人を踏み潰して平気なのだろう。

その怒りを乗せてテッドは唱えた。


「【エレメント・ファイア】!」

テッドの起こした火のエレメントは毒竜を中心に広い部屋を覆った。

炎は高い天井まで届き辺りを焦がしていく。


火のエレメントはギリギリテッド達の所までは来なかったが恐らく毒は火で消えただろう。


だが今のリリオを放置して戦うのは難しい。

何かあった時、それは人喰い鬼がリリオに迫った時や、超神がリリオに襲い掛かった時なんかだ。

そしてリリオを守ったまま戦うのはもっと難しい。

今のままエレメントソードだけで戦うと手数の問題でジリ貧になるし、毒竜を放置すればまた毒が蔓延する。


ここまでか?


テッドの中で諦めが出てしまう。

こんな事なら短距離の瞬間移動を試しておけばよかった。

せめてリリオだけでも逃してやりたかった…



しかしテッド自身は弱気な事を言っても諦め切ったわけでは無かった。

今もこうしてリリオを抱き抱えながらエレメントソードは飛ばし続けている。

だがやはり手数が足りない。

もう間も無く人喰い鬼達がテッド達の前にくる。


「戦神、済まない…リリオを頼む!」

そう言ってテッドは一歩前に出る。


せめて最後の一瞬まで戦ってやる

誰よりも生きた証を残してやる。


テッドは玉砕の気持ちだ。

しかしそれは敵わなかった。



突如飛んできた真っ黒なエレメントソードが一瞬で人喰い鬼と毒竜を細切れにしてしまったのだ。


「ここはサードガーデン?お前が…敵?」

毒竜の死骸、血溜まりに降りた全身真っ黒の男はテッドに向かってそう言い放った。

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