第340話 戦わない2人の戦い。
カーイがテーブルに着くとツネノリとメリシアが居る。
「カーイさん、恨みますからね」
「ごめんよ。僕は酔って暴れた記憶はあるんだけど、何かしたかな?」
ツネノリの目があまりにも怖いものでカーイが不安げに質問をする。
「カーイさんが気絶した後はマリオンさん達の治療、料理の手伝い。対カーイさん戦闘の練習台。夜中も子供たちが気配を消せるかの実験台。そしてこの朝食、2時間作り続けても足りなくて延々作りましたからね」
「それはごめんね」
「メリシアもセカンドで寝ていたのに呼ばれて…」
「私は楽しかったですよ?」
「メリシア!言葉に気をつけるんだ」
ツネノリが必死の形相でメリシアを制止する。
「そうだよね!メリシアも楽しかったよね!またやろうね!!」
マリオンはしっかりと聞いていてメリシアに嬉しそうに声をかける。
「ツネノリのご飯が美味しいからガレンも嫌いな野菜も食べてたし感謝してるよー!」
「…はい」
「あはは、本当にごめんね」
その姿を見たカーイが素直に謝る。
そう言って食事に戻るとカリンとマリカがカーイの横に座る。
「カーイさん、チトセちゃんになんで振られたの?」
「何かしちゃったの?」
「ぶぅー」
ツネノリが漫画みたいに水を吹き出す。
「お前たち、そう言うデリケートな質問はやめろよ」
「えぇー」
「聞かなきゃわかんないし」
「あはは、まああんまり格好いい話じゃないよ。
僕のしてあげたい事と千歳さんのして貰いたい事が合わなかったんだよ。
僕は千歳さんにノースの王妃になって貰いたくて1日もてなしたんだけど千歳さんには合わなかったんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「うん、わかった」
「カリン?マリカ?朝からどうした?」
カムカが不思議そうに聞く。
「へへへ、カーイさんが、ご飯食べたらね」
「話すから待っててよ」
食後になってカムオ達が皿洗いをしているとカーイの手を引いてカリンとマリカがカムカとマリオンの前に行く。
「何だ?どうした?」
「お父さん、見届け人してよ」
「お母さん、練習用のショートソードと軽めの槍を2人分ずつ貸して」
「へ?アンタ達?」
「カーイさん、私とマリカと試合してよ」
「アーティファクトは無し。真剣勝負。それで一撃加えた方が勝ち。カーイさんは私とカリンの2人に一撃ずつ入れてね」
突然の申し出に誰もが驚く。
「え?どうしたんだい?」
「昨日お父さんにやられた傷が痛い?」
「ちょっとツネノリ!ちゃんと治したの?」
「キチンとやってある!」
マリカに睨まれたツネノリがムキになって言う。
「あー…カーイ、もしもなんか昨日の事で申し訳なさとかあるなら試合してくれないか?」
「うん!私からもお願いだよ!」
今度はカムカとマリオンが必死になってカーイに頼む。
「…はあ?わかりました」
カーイは何が何だかわからずに返事をしてしまっていた。
準備が整うと昨日カーイが暴れ回った場所まで行く。
「カリンとマリカが戦う?」
「ツネノリ様、珍しいですね」
「珍しいと言うか見た事が無いぞ」
「ああ。才能だけなら凄いんだよカリンとマリカは」
「でも戦いが嫌いだって基礎トレーニングと練習までで模擬戦なんてしないのにあの子達…」
「口ではチトセの為に戦いたいとは言うけど」
「武器なんて持とうとしないのよ」
カムカとマリオンすら今の状況に目を丸くして驚く。
「カーイさん、お母さんに勝てるくらい強いんだよね?」
「期待してるからね」
「アンタ達、模擬戦なんてしないんだから無理しないでよ」
「わかってるって、お母さん!」
「お父さん、見届け人よろしくね」
そう言ってカリンがショートソードを二振り、マリカがショートソードを二振りの他に軽量の槍を手に取った。




