第327話 飲める人間には飲めない人間の不満はわからないのだ。
豪華客船ディナーの話をしながらモリモリとお肉を食べる。
「なあ」
ビリンさんが何か言いたそうにしている。
「何?」
「今度そこ行こうぜ?」
「え?凄く高いんだよ?」
「稼ぐって、安心しろよ」
「稼いで私と行きたいの?」
「おうよ。そんな格好いい人なら会ってみたい」
「…まあ良いかな。頑張って稼ぎなよ」
お肉御殿の約束に豪華客船、いくら稼ぐつもりだろう?
まあ、実力はそこそこあるから大丈夫だろう。
「あー、そう言えばジョマが豪華客船の支配人さんを助けたからペナルティって言ってたんだよね。何だろ?怖いなぁ」
「へ?ああ神様として治したからか…。まあペナルティって言うかなぁ。あの黄色のドレスは色以外は似合ってたよ」
「は?何ですと?」
「だからジョマのペナルティでカーイさんに買って貰った黄色い服を2着着たチトセの写真をジョマが数人に配ったんだよ。
「千歳様ってば相談なしにファーストで神の力を使って人の命を救ったからペナルティなの。綺麗でしょ?宝物にしてね」って置いて行った」
何?またやったのか!?
「ジョマぁぁぁぁっ」
「まあすげぇ綺麗だけど黄色ってのがなぁ…」
「…誰に配ったんだろ?」
「えー、知ってるけど聞く?」
「知ってるの?」
「俺も気になってジョマに聞いた」
「教えてよ」
「まあ良いか、俺以外はルルさんとチアキさん。後はコピーガーデンのルルさん達だってさ」
「くそぅ、微妙に怒れないライン!」
「ジョマってそう言うの上手いよな」
ビリンさんが笑いながら言う。
そんな事を言いながら焼肉は進む。
「なあチトセ、そろそろ自腹切らねえ?」
「何で?奢りなんだよ?」
折角の奢りなのにビリンさんが自腹を切ろうと言い出す。
変な所真面目なのはやはり王子だよねと思う。
「金額見たらツネノリさん倒れるんじゃね?」
「大丈夫、少し高いけど食べ放題飲み放題にしたから平気だもん」
「何それ?そんなのあるの?」
「それよりさ、そのお肉とビールって合うの?凄く美味しそうに飲むよね?」
昼間はカーイさんがお酒を飲んでいたし今もビリンさんはビールを飲む。
ウチは私以外皆お酒が飲めている。
それがあるからか今日は妙にお酒が気になった。
「ん?ああ悪くないな」
「一口飲ませて」
私はそう言うと右手を前に出す。
「はぁ?だってニホンって20歳まで酒ダメなんだろ?」
「ここはセカンドですー。良いでしょ?」
ビリンさんは「仕方ねえなぁ」と言ってジョッキを持たせてくれる。
一口飲んだのだが…
「苦い…美味しくない」
「な?やめとけって」
ビリンさんが苦さに顔をしかめる私を見て笑う。
じゃあ何でビリンさんは苦いのに飲むの?
「ムカ」
「えぇ、酒なんて人それぞれだろ?無理すんなって」
不機嫌アピールをした私にビリンさんが慌ててフォローをしてくるが、飲める人間には飲めない人間の不満はわからないのだ。
「うふふ、千歳様もビールは苦手ですか?私もです」
そう言ってスタッフのお姉さんが焼き終わったお皿を取り替えに来てくれる。
「お姉さんもお酒飲めないの?」
「いえ、私はビールがダメなんですよ」
そう言うとお姉さんがドリンクのメニューを見せてくる。
「ここ、この果実酒なら好きで飲みますよ。
千歳様も飲んでみます?ほらみかんのお酒とかありますよ」
「あ、本当だ!」
気にしていなかったがこのみかんのお酒なら飲めそうな気がする。
「飲んでみます?」
「うん!」
「えぇ…、すげぇ嫌な予感すんだけど?」
「なに?文句ある?」
折角飲めそうなお酒が出てきたのに邪魔をするとは何事だろう?
「…いいよ。付き合ってやるって」
「ありがとうビリンさん」
ちょっと不機嫌な声を出すとビリンさんは余程のことが無いと受け入れてくれるのはありがたい。
…カーイさんと比較してるかな?とちょっと気になった。




