第202話 だから今この場は逃げずにテッドを送り届けるんだ。
「みんな聞こえる?」
キヨロスさんの声だ。
その直後に千歳の声がする。
「みんな、よく聞いて。
私と王様で一つの見解に行き着いたの」
「僕はチトセのいない時に神の世界で地球の神様とも言っていたんだけど、あの覗き変態趣味の神がおかしい事に気が付いたんだ」
「おかしい?」
「そうなんだ。ゼロガーデンで見つけた毒竜の改良は見た目を変えずに毒の無味無臭、無色化までやれたのにこの世界の魔物は色が変わっていた。
本人は変えたと言っていたが嘘だろう。きっとどうやっても色が変わってしまったんだ」
確かに毒竜に比べて残りの魔物は見た目から違うので違いがのよくわかる。
「そしてさっきのアーティファクト・キャンセラーもおかしいんだよ。
教会、ここから少し離れた場所だとアーティファクトが使えたの。
それに気づいたのは世界中を見ていて、別の国で魔物と戦っていた人達が祝福を使えたからなの」
「そして8体もの神を取り込んで崩壊しない理由。その事から僕達は一つの結論に至った」
「恐らく覗き変態趣味の神は無才の中の無才なんだ」
なんだその救いのない言葉は…
「なんだよそれ?」
カムカさんも我慢できずに質問する。
「本来神殺しをすれば殺した神を吸収して力に変える。
だからアイツは覗きの神なのに隠匿、創造、複製、人脈、戦闘の力が使えるんだ。
まあ、戦闘も基になった戦神が残念だったから弱いけど…。
だけどキチンと取り込めて居ないからどの力も中途半端なの」
「そもそも無才で殺し切れていないから取り込んでも取り込み切れないんだよ。
その証拠にカムオが殴ったら複製神が飛び出してきた」
「多分、取り込んですぐ、仮死状態や意識がない状態の時にその力で作った物は期待通りだけど段々目が覚めたりすると借り物の力だから弱まっていくの…
多分、今出てきた3000人のテッドも…」
千歳の口惜しそうな声。
それだけで何を言いたいかわかる。
弱まった神の力で作ったテッド。
恐らく先ほど戦った話にならなかったテッドの正体はこれだ。
「あ、本当だ!今ぶん殴ったテッドには表情が無い!」
「うん…さっきツネノリが洗脳のアーティファクトを外したテッド2人はちゃんと話が出来て保護を受け入れたけどそれ以外の奴は会話にもならなかったよ」
千歳は必死に悲しさと悔しさを我慢しながら声を出す。
恐らく大半のテッドが救えないことが今判明したんだ。
「テッド、君はどうしたい?」
皆が困惑する中、キヨロスさんがテッドに問いかける。その声はせめて優しくと言う事が伝わってくる。
「…皆の手で始末を付けてもらえないだろうか?
洗脳のチョーカーを外して会話になれば保護を、会話にならなければどの道イィトが戻っても本人も皆も辛いだけだ…」
くそっ、それは仕方ない事だ。
だがテッドからしたら辛い選択だ。
俺が同じ立場なら、なぜ俺には皆が居て目の前の複製された俺には誰も居ないのか、なぜ意識を奪われて死ぬまで戦わさせられなければならないと思う。
テッドの手は煩わせてなるものか。
俺が誰よりも送り届けてやる。
俺は更に決意をする。
この先で殺人の罪を問われるならキチンと向き合う。
だから今この場は逃げずにテッドを送り届けるんだ。
だがその時、若い方のキヨロスさんの声が聞こえる。
「殺してやる…
僕がこの手で殺してやる…
皆の無念、戦神の世界の無念、テッドの無念…」
複製されて無駄に殺される運命。
それは今のキヨロスさんが一番怒る話だ。
くそっ、この状況でくるのか?
だが、これはある種の好機だ。今度こそ押し通してやる。
そう思ったのだがレンカ達と千歳の説得でなんとかなってしまった。




