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サード ガーデン  作者: さんまぐ
第二章・半神半人の女神。
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第20話 命の選別は嫌なんだよ。

私は最後の力で戦神をサルディニス=《サードガーデン》に残して来て私自身を始まりのゼロガーデンに瞬間移動した。


最後の力と言うのはこれ以上力を使うと人に戻れなくなる限界と言うところだ。


ゼロガーデンにある私の二つ目の家に瞬間移動で飛び込む。

リビングに倒れ込む形で着いた私を2人目の母・ルルお母さんが気付いて駆け寄ってくれる。


「千歳!どうしたのだ!?」

「力…、使い過ぎたの…ギリギリ…サードが壊される。

ジョマも…東さんも居ないから……1人で何とかしなくちゃいけなくて…、ルルお母さん…王様を呼んで。王様が来たら力を受け止めてって伝えて」


私はルルお母さんに必要な事を伝えると倒れ込む。





真っ暗な空間で目を覚ます。

あ、ここは0と1の間。

時を止めた場所で神の力を使うと夢の先をこの0と1の間にする事も出来る。

ここで目が覚めたと言うことは…


「チトセ!」

「王様、良かった。来てくれたんだね。ありがとう」


「こんなになるまで力を使うなんて何があったんだ?

ルルが慌てて僕を呼んだからすぐに駆けつけたけど」

目の前の王様は慌てた顔で私を見る。

王様は私と同じ半神半人の神であり人間である存在。

創造神イィト《東 京太郎さん》の代理でゼロガーデンを管理している。


私と王様は人の身で神の世界に立ち寄った為に神如き力が身についた人間。

神になる事も出来たが私も王様も2人ともソレを良しとしないで人でいる事を選んでいる。


「王様、同時進行って出来る?」

「今、チトセの神如き力を受け止めるのと0と1の間で話を聞くのに使ってる」


そうか、そうだった。


「もう一ついければ今から話す内容を皆に知らせて欲しいの。ダメなら話が終わった後でも構わないはず。

でもそんなに時間が無いの」


「そんなに慌てて一体何があったんだ?

大丈夫だ、僕に言ってくれ!」


普段は嫌味ばかりだが本質はとても優しい王様は私を抱き寄せる。

そろそろアラフォーなのに簡単に私を抱き寄せるパワフルな王様。


その胸の中で私は声を上げて泣いてしまう。

私が弱い神ではサルディニスの人々が喜ばないと思ってこの4年は肩肘張って強く生きてきた。

それでも今回のことはキツかった。


「アイツが現れてサードを滅茶苦茶にしたの!今もサードに隠れられた!

私の力が強すぎて攻撃をすると世界を滅ぼしてしまう!

スタッフ3人をアイツが殺したから神の力で蘇生させてきたの。

でもやり過ぎた。

だから身体がもたなくて戦神に頼んで私は帰ってきたの」

感情に任せてただあった事を好きに話す。


「バカな!サードで蘇生なんて無茶しすぎだ!それも3人も?

チトセは今もサードで神として常に力を行使しているじゃないか!」

そう、サードでは魔物の出現から人口の増減、農作物の育ち方等の管理と言う、行わなければならない事が多い。

今、2人の神が席を外しているから私が同時進行で全ての管理を行なっている。


「ごめん。でも命の選別は嫌なんだよ。

誰も取りこぼしたく無いの…

特に見てしまった命やサードの枠組みから外れた場所で起きた事件は取りこぼしたく無いの」

「それにしてもだよ。それでアイツって?」

王様が適度なタイミングで相槌を打ってくれる。


「覗きの神。アイツがサードにちょっかいを出してきたんだ」

覗きの神、以前このガーデンにちょっかいを出しそうだと装飾神ジィマ《ジョマ》に相談を受けて王様と神の世界に赴いて覗きの神、本当は視覚の神と話をした。

交渉は決裂し、覗きをやめない。覗かれる方が悪いと言う事を言われ、当時14歳の私は熊さんプリントのパンツを履いていて覗かれたので熊さんパンツと呼ばれている。

覗かれたショックを受けて何もできなかった私に変わってこの王様が二度と覗く気にならないように拷問までしてくれたし、東さんとジョマ、ゼロガーデンの皆も痛めつけてくれた。



「覗き変態趣味の神?アイツ…散々痛めつけてやったのに懲りてないの?」

王様が殺気をダダ漏れにして怒る。


「でも変なの」

「変?」


「うん、覗きの力を使わずに別の力を使っていたし、プラスタを生み出していた」

「何それ?」


「それについては地球の神様の所に行けって言われたんだ」

そして私はサードでのやり取りを全て説明する。


「ゼロガーデンで生み出された4年前のプラスタが今になってサードガーデンにプレイヤーと同じルートで降り立った。

しかしゼロガーデンの記録にも関係者の記憶にも残っていない」

「でも身体の記憶にはプラスタの素体を作ってくれたペックお爺さん、カリンさんとマリカさんの会話が残っていた」


「そして授かった祝福…アーティファクトはツネノリの光の腕輪、マリオンの戦闘経験。後は短距離の瞬間移動…」

「そして私も東さんもジョマも知らない生命を燃やして力に変えるアーティファクト」


「くそっ、わからない事だらけだ」

「そして追跡を恐れた覗きの神はサードに隠れて私と王様に手出しが出来ないようにしている。仮に見つけて攻撃が出来ても防ぐだけで世界が壊れてしまう」


現状を王様に伝えてみたがまったくいい話がない。


「それで?皆に知らせるのは何をどう知らせるの?」

「うん。神の使い・記す者の記録には無いけどそれは神の力を使えば見えなくなるから、皆の記憶に頼るしか無いの。

だから皆の意見が聞きたいの」


「わかったよチトセ。

じゃあ目を覚ますんだ」

「え?」


そう言われた私は目の前が晴れて目を覚ます。


「千歳!」

「大丈夫か?」

「起きたか?」

「千歳様?」


起きた私はゼロガーデンの神殿に居て目の前には第2の母と父、兄と兄のパートナーが居てその先に仲間の皆が居てくれた。


「今日はいつ?」

「千歳が倒れて4時間だ」

私の兄・ツネノリか横で教えてくれる。


「え?」

あの神になりかけた症状は1日から寝込まないと収まらない。

前に経験したから知っている。

それが4時間?


「嘘!?バカ!!」

私は慌てて寝ていた部屋を飛び出す。



「あ、やっと起きた?」

部屋の外で王様が脂汗をかいて笑っている。


「1日かかるのを4時間で治すなんて無理し過ぎ!王様身体で受け止めてそのままにしたでしょ!?」

「別に良いだろ?チトセには出来ない。僕には出来た。それだけさ」

そう言って王様は不敵な笑みを浮かべてきた。

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