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サード ガーデン  作者: さんまぐ
おまけガーデン②~ツネノリ視点のサードガーデン。
181/492

第181話 俺はせめてメリシアの心を支えたいと思いメリシアの手を握る。

お茶を飲んだ千歳がサウスに行こうとしながら父さん達を見る。

「あ、お父さんとお母さんはごめんね。帰ってきたら家に送るね。王様は呼ぶだけ呼んで放置なんて駄目だよね。お城に行ったら一言言っておくね」

取ってつけた言い方だったが千歳からすれば忘れていないよと言うアピールだと思う。



「千歳」

「何?お父さん」


「お前は俺の娘だ」

「そうだよ」

父さんが真剣な顔で千歳に話し始める。


「そして未成年だ。神の力があるからたまに自分の立場がわからなくなることもあると思う」

「自覚してるよー、どうしたの急に?」

千歳はキョトンとした顔で父さんに相槌を打つ。


「俺はお前が神になる事を認めない。今回は親のいう事を聞きなさい」

「俺も同意見だ。普段は俺もツネツギも千歳に強く何かを言って押さえつけるような事をしたくない。それにお前は年以上に大人びている。だから言わなかった。でも今回は言う。俺は千歳を神にさせない」


父さんとツネジロウから言われて千歳は何も言えなくなる。

父さんは基本的に千歳を信じて任せている。

その父さんが言うのだから余程の事だ。


「千歳、あなたは私がお腹を痛めて生んだ娘。お母さんは常継さんやツネジロウさんのように言いたい気持ちを我慢して、一つだけは言いたいの。お願いだから今回は我慢して?せめて東さんや道子さんが戻るまで我慢して?」


千明さんも泣きそうな顔で千歳に声をかける。

やはり父さんと千明さんの苦悩は俺が思っている以上なのだろう。

だが俺や母さん、ツネジロウにメリシアが何もない訳ではない。


「母さんは言わないの?」

俺は母さんに聞くと今まで口数少なく黙っていた母さんは千歳を見ると少し困った顔で微笑んだ。


「私よりもノレルが大変だ。まあ、ルノレやノレノレも皆千歳を止めたいと申して居る。

今も3人を黙らせるのに集中していた。

千歳よ、お前は偉いな」

母さんは穏やかな顔で突然千歳を褒め始めた。

父さん達もそれには驚いている。


「ツネツギもツネジロウも黙っておれ。

千歳は皆からこう言われても怒らず、意地を焼かずに真剣に話を聞いている。

それがまず偉い。

そして救いたい命の為に自分を犠牲にする。

それも並大抵の人間には出来ない。

千歳は偉いと思う。


だがな千歳、お前の覚悟の先で泣く者が居る事はわかっているな?

仮にお前がテッドや超神に散らされた命を救いたいと思った時、実行に移した時、私は泣く。

私以外は本人に聞くがいい。だが確実に千明も泣く。この場の全員が泣く」


母さんの真剣な声と話し方。

千歳はいつもの感じと違う母さんの話を聞いて困惑してしまい「え…あ…、…私……」としか言えていなかった。


「答えはいい。心に刻んでよく考えてくれ。

キヨロスの言った1日の休みにはこの事も含まれているだろう?」



そう言うと母さんはまた黙ってしまった。

きっと母さんの中でノレル母さん達が自分たちも千歳に一言いいたいと言っているのだろう。

母さんが話したのなら次は俺の番でいいと思う。


「千歳」

「ツネノリ」

4年間散々見てきた顔が目の前に居る。

妹は4年の日々で随分と大人びたと思う。


「お前が神になるのなら俺もなる」

「この話何回目?」

千歳がやれやれと相槌を打ってくる。


「何度でもするさ、メリシア」

「はい」


「俺と一緒に人を捨ててくれないか?一緒に神に…不老不死になって永遠を共に生きてくれ」

「はい。当然です」

メリシアはさも当然と言う顔で返事をしてくれる。

わかって聞いていてもそれが嬉しくてたまらない。


「だからさせないって」

「するさ、瞬間移動をしてもする」


「才能ないじゃん」

「だから成功するかも知れない」


「…」

「神の世界は狙っていける場所ではないが俺になら行けるかもな」


千歳が黙った所を見るとやはり俺の瞬間移動には可能性が含まれていると言う事だ。

メリシアも察したのだろう。


「それにジョマ様や東様は私やツネノリ様の意思を尊重してくださると思います」

「メリシアさん!!ダメだよ!!」


メリシアは東さんとジョマの名前を出して千歳をけん制する。



「じゃあ千歳様も駄目です。半神半人でやり切ってください」

声色でわかるがこのメリシアは譲らない。

命すら厭わないのだ。


「神の世界で聞いたけど私が世界の管理をしたら一瞬で許容オーバーになるって言われたの」

「じゃあ管理は諦めてジョマ様達が帰るまで待ってください」

母さんの話があったからと言うのも大きいだろう。

今の千歳はメリシアには勝てない。

千歳が本格的に困った顔をし始める。


「メリシアそこまでだ。千歳、俺達の気持ちは伝えた。間に挟まれて辛いと思う。だがそれが重責だ。大変だがよく考えてくれ。そして出来たら人のままで俺達の子を抱いてくれ」

「え?」


困った顔の千歳は突然の事で呆然としている。


「「子供!!?」」

「ツネノリ?」

「お前達、まさか…」

父さん達まで驚いてしまっている。

俺は一息ついて言いなおす。


「さっきメリシアと話し合った。この件が終わって、千歳が無事に人のまま帰ってきたら俺はメリシアに結婚を申し込む」

「そうしたらきっと近い未来に私達は子を授かって親になるの。産まれてくる甥っ子か姪っ子を千歳様に…私の義妹に一番に抱いてもらいたい」


多分千歳たちは勘違いをしていたのだろう。

この言葉で少しホッとしているのがわかる。

そして千歳が少しだけ体制を立て直してきた。


「それって脅迫じゃない?私が人をやめたら結婚しませんって事?」

「いや、俺は千歳を信じている」

「私も千歳様を信じています。でもうちの両親も私の身体から出来た赤ん坊を心待ちにしています」

メリシアは的確に千歳が困るポイントを突いてくる。

千歳がまた困り始めたのが手に取るようにわかる。


「もう、わかったよ。自分からなるようにはしないよ。

でも不可抗力でなったら許してよ!!」

千歳はそう言って逃げるように瞬間移動をしてしまった。



「出来るだけはしましたね」

「そうだな。後は千歳を信じよう。さあ、メリシア…」


「はい」

俺はせめてメリシアの心を支えたいと思いメリシアの手を握る。

メリシアもそれに応じるように握り返してくる。


「お母様、お願いがあります」

真剣な眼差しでメリシアは母さんにそう言った。

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