第162話 テッドとリリオの前夜。
「ちゃんと毎日大きなベッドに2人で仲良く寝るんだよー」と言ったマリオンの指示に従ってテッド達は2人で寝ている。
テッドが仰向けでリリオに腕枕をしていて、リリオはテッドに抱きつく形で横になる。
ここ数日のテッドは、日中はサルディニスのオプトの屋敷にジィマと行ってオプトの服や思い出の品を取ってきたり、ネイの家族の所にネイを連れて行ったりした。
ネイに別れの挨拶をと言ったのはリリオで「ちゃんと挨拶したほうがいいと思うよ」と言われてテッド達ははたと気が付いた。
ネイの家族はシィアではなくイェイロの地に住んでいて神話の始まりの地に娘が導かれた事は感謝しかないとジィマにお礼まで言っていたし、妹や兄も自慢だと言ってネイを褒めていた。
ジィマは記念としてネイの家族が集合している絵を用意していた。
それを貰ったネイの家族は涙を流して手を合わせてジィマに感謝をしていた。
「テッドー、起きてる?」
「ああ、起きているぞ」
「いいのかなー?」
リリオのいいのかなと言うのは明日の話で、明日リリオは神の世界に行って半神半人になる。
そもそも、リリオは人間でテッドは神なのでいずれ歳の問題等が出てくる。
そしてこの数日でわかったのは、テッドは決して弱くはないのだが生命犠牲強化の影響で倒れるまでが早い。
そこでリリオが半神半人になる事でテッドのサポートをしたいとイィトとジィマに直接相談をした。
2人の神はリリオの考えを尊重してくれて、半神半人に覚醒をする為に神の世界に行く事になった。
だがいざ行くとなると緊張してしまうのだ。
「行きたくないのか?今からでも父さん達に行かないと言うか?」
「行くよ。行ってテッドの助けになるの。
でも私がチィト様達みたいな半神半人になれるのかなぁ?」
「別に戦わない半神半人でもいいだろう?」
「そうかな?」
テッドの横顔を見ながらリリオは欲しかった答えがもらえて嬉しい気持ちになる。
「そう思うぞ」
「ありがとう。オプト君達は良かったのかな?」
オプトとネイもテッドが誘って2人が願えば半神半人にしても良いと言う話をイィトから貰っていたのだが、オプトは「始まりの地に来られただけで十分です!ガレン君達と一緒に僕は始まりの地で人間のまま大人になります!」と断るし、ネイも「ご提案ありがとうございます。でも私は人としてイィト様達にこれからも祈りを捧げます」とカムオの横で清々しい笑顔で言ってきた。
そう言われては誰も何も言えない。
「良かったのだろう。
ここまでついて来てくれただけで感謝しかない」
「そうだね。
ありがとう、落ち着いたよ。寝よう」
そう言ったリリオは緊張が嘘のようにあっという間に眠りにつく。
それはテッドが前もってジィマから「緊張して眠れなかったら可愛そうだから使ってあげて」と教えて貰っていた眠りの力だった。
「おはよう。気をつけて行ってくるんだよ」
早朝にも関わらずカムカとマリオンが見送りに来てくれる。
リリオを半神半人にする事をカムカ達にも報告をしたら喜ばれた。
「それがいい。テッドの為にもリリオの為にもな」
「そうだね。テッドにも支えは必要だし、リリオもいつも心配してるからそれがいいよね」
そう言った後でカムカ達は喜んでくれた。
「ありがとう」
「帰りは何時になるの?」
「リリオは、今日は流石にご飯の用意難しいだろうからマリオンに多めに作ってもらうから気にすんなよ」
「父さんの話だと覚醒が始まればその場で済ますけど覚醒しなければ早めに帰ってこれるらしい」
「ありがとうございます。
カムカさん、マリオンさん」
話終わるのを待っていたのだろう。
4人の前にイィトがやってきて、テッドとリリオを神の世界に連れていく。
あっという間に2人は神の世界に着く。
広場のような場所で目の前にはジィマと戦神が到着を待っていた。