第146話 神とテッド。
「神…、俺が?」
イィトとジィマから神になるように勧められたテッドは困惑した。
「そうだよテッド。
その身に手が出せず呪いを取り除けない以上、君の身体はこれからも命を燃やして力に変え続ける」
「だから命に限りのある人ではなく神になる事でその呪いを無効化するのよ」
イィトとジィマの提案はテッドを神にすることで呪いの回避を行うというものだった。
だが、まともな人間でも無い自分が神になる事は許される事なのであろうか?とテッドは自問する。
「テッド、重く考えなくていいんだ。
チトセだってあんな性格でも半神半人でサードでは女神と呼ばれているんだろ?」
魔王が笑いながら言う。
「俺が神になる事は許される事なのだろうか?」
「神の不始末を拭う為にはそれしか無いのだから誰も何も言わないさ」
「それにチトセなら「誰にも何も言わせない」って言うよ」
魔王の声でイィトとジィマは「確かに」「違いないわ」と笑う。
「さあ、決断の時よ。
千歳様も決断をした。
テッド、あなたが人として死を望むならイィト…京太郎はあなたに今も送っている神の力を止めるわ。
そうすれば見立て通りなら1時間で死ぬ。
1時間あれば会いたい人たちにお別れは言えるわよね?」
チィトが何かを決断した。
テッドはそれも気になった。
だが今は仮に神になって孤独になった場合はどうすれば良いのだろう?と言う事を考えていた。
「千歳は決めたのか?」
そう言って現れたのは1人の中年男性だった。
「ええ、私達の子供が生まれてくれてよかったわ」
「滅多に使えない方法だが僥倖だな。
所でテッドは何を気にしている?
細かいことは神になってから考えればいい。
リリオやオプトと暮らしたければ暮らせばいい。
断られたら神界に住めばいい。
生きていれば良いことはある。
私はテッドの友だ。お前を1人にはしないぞ」
「その声!戦神か!?」
「あ…そうだったな。人の姿で会うのは初めてだったな。
そうだテッド。私が戦神だ」
目の前の中年、戦神が豪快な笑顔でテッドに握手を求めてくる。
テッドは嬉しそうにその握手に応える。
「フナルナは?」
「無事だ。超神の妨害もあったがテッドと「蘇った真紅の少女」が放った巨大な雷の球が超神に当たった隙に奪還できた。
呪いに関しては皆が助け出してくれた創造神に外させたよ」
戦神がしみじみと感謝の気持ちを言葉に乗せて話しかけてくる。
「良かった」
「それで後はテッドだ。
私は準備万端だぞ」
「戦神?」と聞くテッドにイィトは話す。
「テッド、君が神になる事を望めば僕達の力できっかけを与えてから神の世界に君を連れていく。
そこで君を神に変容させる」
「そう言えば神様、テッドは神化できるの?」
「身体はゼロガーデンで作られたプラスタだから問題は無い。
魂が弱いから2つの補助が居る」
「1つは私達が神になれるだけのきっかけを魂に与えるの。神化の補助は…」
「それで戦神が準備万端なんだね」
「そうだツワモノよ。
テッドが神化するまで私がテッドを守る。
さあテッドよ、決めるのだ」
あまりわからない話ではあったが、イィトとジィマの力を借りて神化をし、成功するように戦神が守ってくれることはわかった。
ここまでの好意を無駄にする意味はテッドにはない。
「…では頼めるか?」
「任された」
戦神が嬉しそうに頷く。
「テッド、その次の話は君が目覚めた時にしよう」
「千歳様同様、他の神々が私と京太郎に力を分けてくれたからあなたを救える力が残された」
「「神の力でテッドを神にする土台を作る」」
そう言って目を瞑り、手を広げるイィトとジィマ。
光がテッドの身を包むとテッドは眠気に見舞われた。