第110話 テッド対黒いキヨロス。
「誰かテッドの所に行ってあげなきゃ!1人でアイツの相手なんて無理だよ!」
「くそ!キヨロスを止めるのは兄貴分の俺なのに!数が多い!」
「さっき止めたように俺がまた止めるべきなのに!場所が悪い、離れすぎている…」
「私も瞬間移動を使ってしまったからもう飛べない!」
「テッド、無理をするな!」
「くそ!邪魔をするな!」
皆が口々にテッドを案じている。
「ウヒャヒャヒャヒャ!
ご苦労なこったぁ!
ウッヒャー!
ほら!熊さんパンツは頑張れ、オラは魔物にまで防壁を張ったから攻撃手段のない連中の攻撃は当たらない。
後は防壁を超えるのは神を殺す攻撃だからな。
コイツらの攻撃で世界が滅びないように集中しろよぉ?
そして世界の壁がちょっとでも弱くなった瞬間にオラはおいとまさせてもらうぜ。
どこに行こうかな〜、ファーストガーデンで魔物を呼ぶなんて良いかもな!
ウヒャヒャヒャヒャ」
この発言によりチィトは世界を守る防壁を更に張り続けなければならず何もできない。
そして天に控える魔王キヨロスも超神を逃さないように「牢獄」の力を緩められない。
テッドは飛んできた12本の剣をエレメントソードで打ち返す。
「お前だって覗き変態趣味の神に弄ばれただろ?
それなのに奴を庇って僕に敵対するの?」
テッドの目の前に居る黒い魔王、黒キヨロスは恐ろしい威圧感でテッドを睨んでいる。
「俺に色々なモノをくれた人達。
その人達が生きる世界を守る。
超神にされたことは許せるモノではない。
今も殺されている複製された俺の無念もある。
だが俺は俺より仲間達だ」
テッドの意思は固く強く。威圧だけてあればキヨロスに遅れは取らない。
「もう一度言う。僕はお前の背後にいる覗き変態趣味の神を殺すよ。
この意味がわかるよね?」
「カムカ達が魔物達を倒して超神を抑えるまで俺が黒魔王を止める」
「【アーティファクト】」
その声で黒い光の剣がテッドに飛んでくる。
「【エレメントソード】」
テッドは一瞬で12本のエレメントソードを出す。
お互いの出した12本の剣は剣を狙わずに使い手…出した本人達を狙って行く。
そしてギリギリの所で防御に回した剣同士が激しくぶつかり合う。
…1本、2本とぶつかるが、今のエレメントソードはあの時のように打ち負けない。
「へぇ…この前より強いなんて凄い進歩だね」
「ああ、俺が負けたらみんな困るからな」
そこにチィト経由でツネノリから通信が入る。
それはそこに向かえない謝罪と瞬間移動を破る方法だった。
「いいさ、なら遊んでやる」
そう言うとキヨロスが高速移動で切りかかってくる。
テッドも負けじと高速移動をして剣を打ち込む。
そのまま繰り返される剣撃。
高速移動のせいで戦場を縦横無尽に駆ける事になる。
「【エレメント】」
テッドは相当な集中をしているのだろう。
今この戦いで属性の指定をしないで思い通りのエレメントを発動させている。
出したエレメントは火で近くにいたキノコの魔物を巻き込んで黒いキヨロスを焼く。
「へぇ、防御壁が一枚破られた。やるじゃないか!」
そのまま剣で反撃に出る黒いキヨロスにテッドは二刀流のエレメントソードで真っ向から挑む。
「【時操作高速化】」
テッドは座学で見たツネノリの動きを真似て二刀流の剣速を引き上げて斬りかかる。
キヨロスの反撃とテッドの攻撃で周りの魔物達は細切れになっていく。
「くっ」
「【エレメント】」
そこに叩き込むように水のエレメントを放つ。
激しい水流が黒いキヨロスを襲う。
吹き飛んだキヨロスはそこで終わらずに姿を消す。
瞬間移動だ。
だが対策はツネノリに聞いていた。
「水の力を空気中に撒くんだ。
そして、空気中に舞った水の動きに注意しろ。急に水が動く場所、そこからキヨロスさんは現れる」
その布石としてテッドは水のエレメントを使っていた。
確かにわかる。
感じるのだ。
空気中に撒いた水のエレメントが一瞬揺らいだのを…
「そこだ!」
両手にライトソードを構えたテッドは黒いキヨロスの出現に合わせて一心不乱に剣を振るう。
「何!?」
現れたキヨロスは目の前で剣を振るうテッドに驚く。
咄嗟に剣を構えて防御姿勢になったお陰で破られた防御壁は一枚で済んでいた。
だが威力までは消せずに吹き飛んだ黒いキヨロスがサルディニスの大地に転がった。