第103話 テッド達と神の救出。
テッドの決断…
黒いテッド、複製されたコピーテッドが超神の能力不足で複製に失敗している個体が大多数であることを全員が知った。
そして、テッドが下した決断「皆の手で始末を付けてもらえないだろうか?」という言葉は本当に辛い事だ。テッドからすれば自分と同じ存在を殺してくれと頼んでいる。
周りの皆も辛い。
この決戦で全員がテッドを知った。テッドの不器用さ、記憶を持たない事による弊害や純粋さ。そういうモノに心打たれていたのだ。
そのテッドと同じ存在を殺すと言う事が辛かった。
「殺してやる…
僕がこの手で殺してやる…
皆の無念、戦神の世界の無念、テッドの無念…」
テッドや皆の絶望に呼応するかのように黒魔王のキヨロスが怒り始める。
命を弄ぶ行為は今の黒魔王が一番怒る話なのだ。
「黒パパダメだよ!」
「落ち着いて!」
「父さん!」
「父様、怒りを収めて!」
「父様お願い」
「父さん!チトセを助けるんだろ?落ち着けよ!」
怒り狂ったのは黒いキヨロスで子供達が慌てて止める。
「黒さん、出来る?出来ない?
私を助けてくれないの?」
「チトセ…」
子供達とチィトの声で少しだけ冷静になる黒キヨロス。
「まだ毒も蔓延しているし毒竜も居るよね?倒してくれないの?」
「…やるさ、リーン達や子供達にも頼まれているんだ。
あっという間に片付けてやる!」
優しい言い方のキヨロスは本当に天で世界を見ているキヨロスによく似ていた。
「黒さん、ありがとう」
チィトは感謝を告げてホッと胸をなでおろす。
「よし、話を戻す。
覗き変態趣味の神から複製神が出た事で状況が変わった。
さっき怒ったカムオの一撃で複製神を吐き出したから、また殴れば他の神が出てくると思う。
それで奴を丸裸にするんだ」
「ん?でも俺の一撃じゃ出なかったぜ?」
「多分カムカとマリオンの一撃とガミガミ爺さんの攻撃で鍵が開いた状態だと思うんだ。
だからカムオの攻撃で神を排出した」
「じゃあまた俺が殴ります!」
「カムオ、そんな事言ってまたチトセに抱きつきたいだけでしょ?」
マリオンがこの場にとんでもない爆弾を打ち込む。
「何!?カムオが千歳さんに抱きついた!?」
「なんて事を!」
「おい!チトセは俺の嫁になる女だぞ!何してんだ!
その事でカムオ以外にチィトに惚れこんでいる、ガイとガルとビリンがギャーギャーと煩くなる。
「うるせぇぞクソガキども!!」
だがガミガミ爺さんの一喝で静かになる。
「でも…」
「ずるいと言うか…」
「腹が立つ」
ガイとガルとビリンの3人は諦められずに不満を口にする。
「仕方ないな、じゃあ今から覗き変態趣味の神が油断したタイミングでいきなり送りつけるから即対応して一撃入れるんだ。
それで神を吐き出させられたらチトセからご褒美でもなんでも貰えばいいよ」
「ええぇぇぇっ?王様?」
突然の申し出に慌てるチィト。
「チトセはさっき怒って僕の制止を聞かなかったからね。お仕置きだよ」
「うぅ…言い返せない」
「キヨロスさん、千歳にそんな…」
ツネノリが兄としてチィトを庇う発言をする。
そう、普通であれば妹を賞品のように扱われれば苦言を呈するのは当然のことなのだ。
「じゃあツネノリは、やれるもんならタイミングを見て勝手に瞬間移動すればいいだろ?」
「ぐっ…」
キヨロスに瞬間移動の事を指摘されて言葉に詰まるツネノリ。
ツネノリはかつてテツイから高速移動を習った影響か瞬間移動のセンスが壊滅的にないのである。
「え?ツネノリって4年経っても瞬間移動ダメなの?」
「ぐぐっ…」
そこに黒魔王のツッコミ。
黒魔王からしてもツネノリは可愛い弟子なのだ。
ツネノリが何も言い返せなくなったところで魔王が話を進める。
「あー、可哀想だから神殿で出番待ちのガリルにもチャンスあげるから準備しておきなよ。
じゃあ始めるよー」
「キヨロスさん!俺には!」
「カムオ、まあ覗き変態趣味の神の中には後6体の神が入っているからツネノリが邪魔しなきゃ二巡目もあると思うよ?」
「やった!行くよ筋肉!!」
カムオは嬉しくなってテンション高くフナルナの兵隊達を蹴散らす。
「マリクはどうするの?」
「チトセさんが嫌がっているから俺も参加する。皆からチトセさんを守る」
「マリクさぁぁん!ありがとう!!」
チィトは本当に嬉しそうに言う。
「ちっ、マリクの奴」
「チトセさんに取り入ったな」
「アイツより先に超神から他の神を救い出してやる」
そんな世界の平和に関係のない戦いが始まっていた。




