誤解アンド誤解
頭の中がガンガンする。
『何者だ、キサマは。人間の小娘が抵抗できる道理がなかろう』
「普通の人間の小娘よッ! 辺境の貧乏田舎村出身で悪かったわねッ」
戦場を見守っていたら、いきなり脳を揺さぶるような、鼓膜無視な上に音量マックスの声が頭の中で反響する。
早く消えてほしい。
『それは無理だ。我も出たいが何故かできん』
「……はぁ? ちょっと、どういうことよ」
聞き捨てにならないわね。まさか一生居座る気? ――というか早く消えて、独り言の多い子だと思われちゃう。既に皆さんに脳内リヴィエ劇場を聞かれ、絶賛誤解されているわ。
それになんか体から邪悪で禍々しいオーラが吹き出ているけど!?
『我に体を渡せば解決だ』
「嫌です! 何者ってこっちのセリフよ! ……うん、言わなくて良い。察しは大体つくから。…………ねえ、せめてオーラの止め方を教えて。みんな、さっきとは違う怖い目で私を見ているんだけど……?」
『良かろう。ならば塵芥になるがいい。羽虫共』
「――――ヘ? ――キャ!?」
その声と共に、私の体から更に一際大きい波動が放たれ、負傷したリラル王国と獣人の精鋭達を吹き飛ばす。
「――ぐわぁ!」
「……こ、この力は……魔神!」
「リヴィエ様…………!?」
怪我し、今も死にそうな皆さんはまるで嵐に襲われた小舟のように、ぐったりと倒れ、呻き声を漏らす。
『――――っく、我の力がここまで弱まっておるとは……。虫けらすらも満足に殺せぬのか?』
「ぎゃあぁあ! 何してんのー!? 殺すな! 生かして!」
魔神の突如の行動にびっくりし、悲鳴を上げる私。
不幸中の幸いと言うべきか、みんなはかろうじて生きている。
『敵は容赦せん』
「味方よ! 私の。一応……。ああ、もう。魔神だかなんだか知らないけど、私の同僚に異端異端とヤバいヤツがい――――ハッ! この視線――」
味方にガッツリ敵対するような行為をした魔神に文句をまくしたてる途中、私にガッツリ視線を向けている異様な気配に気がつき、その者に目を向ける――。
「――リ・ヴィ・エ・ちゃ・ん?」
…………ぎゃあぁあああ!!!