準備万端だから安心しなさい。
……なんの話だろう? と私が困惑していると、負傷していたリラルの精鋭達は信頼の眼差しを私に送り――。
「ご謙遜なさらずとも。実は我々、見ていました。先程、魔神に対し不敵な笑みを浮かべながら圧倒してましたよね?」
爽やかな笑顔と一緒に、私を尊敬し始める。
しかし、当の本人の私は、一体何のことやらさっぱりわからない。
わからないので、聞き返すに近い形でポツリと呟く。
「……謙遜、ですか?」
「えぇ。確か魔神ゼルティアに『知るが良い』とか、『びっくりするが良い』だとか。不敵に笑いながら恐ろしい魔神相手を圧倒していました……ですよね?」
精鋭達はそう言い、私を信頼と尊敬の目で見つめてくる。
――それでわかった。
魔神ゼルティアと他のキーワードから察するに、おそらく先の暇を持て余していた私の脳内やり取りを聞いていたのだろう。
……いや、聞かれていた、と言ったほうが正しいわね。
点と点が繋がり、謎が解けた私の第一感想は――死にたい。
というか、顔が恥ずかしさで赤くならないように頑張るだけで精一杯。
だって、私の脳内劇だよ? 聞かれていたのは。
――頭の中で勝手に魔神に名前をつけ、
――勝手に最弱選手権大会を開き、
――勝手に優勝し、
――勝手に弱さで魔神をびっくりさせていた。
しかも、表情だけではなく、口にも出していた。……恥ずかしくて死にそう。
無意識に口に出した脳内劇を精鋭達は誤解し、私が陰ながら魔神と人智を超えた戦いを繰り広げている――と思われていたらしい。
「――聖女様? もし我々の治療が、魔神ゼルティアとの戦いの妨げになるのでしたら、事情を知らずに治療を要求した我々をお許しください。大変申し訳ございません」
心の中で悶絶する私の気持ちなど、精鋭達は知るはずもなく、親切に頭を下げてきた。……違うんですよ……違うんです。ああ、違わないけど違うんです……!
……でも言えない。
言えない代わりに、私は無言でバッグから大量のポーションを取り出し、精鋭達に渡す。
「……こ、これは? ……あの……聖女様?」
半ば押し付けるような形で、精鋭達は私に渡された大量のポーションを見つめながら尋ねる。
勝手に誤解され、脳内寸劇を聞かれ、色々言いたいけど何も言えない私は、せめてコイツラにはちょっと優しくしようと決めた。……決して脳内寸劇を聞かれた事実を早く忘れたいとかではありません。
「……わかりました! 流石大聖女リヴィエ様です! ありがとうございます。なるほど、そうですね。……魔神との戦いに集中したいから、コレ使って自分で治せ――ということですよね?」
……が、渡されたポーションを前に、精鋭達は顔を見合わせた後、私の予想の斜め上のことを言い出した。
「流石魔神の復活を予知していたリヴィエ様、過酷な持久戦になる事を知っているのは当たり前ですよね! だから装備ではなく、大量の回復薬を持ってきました。我々の思慮不足、痛感いたしました……!」
精鋭達は賞賛の言葉を口々に言い、興奮しているが、事情を全部知っている私から見れば、その尊敬と信頼は私ではなく、彼達の頭の中に存在する――”事前にお見通しな私”に述べている。……あなた達、誤解しているのよ。
彼達の賞賛の言葉と敬意に満ちた眼差しに、私はもはや何も言うまいの心境になり、穏やかな笑みを浮かべ、こう告げた――。
「――えぇ。そうです。在庫処分――じゃなくて、準備万端だから安心しなさい。思う存分に戦ってきなさい」
「「「「「「おぉおおおおおッ!」」」」」」
……もうどうにでもなれ、ですわ。




