あの子のこと、我、気になります。
半日以上が経過し、”ソレ”は焦っていた。
数十万年前から封印されて、長い時を経てようやく得た復活のチャンス。――が今正に失われようとしている。
実に不可解だ。
まるで待ち構えていたかのように、我の前に、復活を阻止しようとするヤツらが現れた。
しかも有象無象の中に、憎き古代龍の一匹も混じっておる。
……我々の復活を予見していたのか? 一体どういうことだ?
、
はるか昔、共にこの世界に生まれ、途中で枝分かれし、魔神と呼ばれる神達がいる。
――我々だ。
同胞の混沌と秩序、両陣営の神に反旗を翻し、戦争の末に破れ、封印されていた。
だが同胞と同じく、我々も神故に不滅であり、封印するに他なかった。
実体を失い、精神体となった我々は世界の各地に封印され、二度と復活できないように周辺に我々の力を吸い上げる遺跡を神々は作り、立ち入ることを禁じていた。
後に封印の地は漏れ出した我々の力に惹かれ、様々な魔獣達が住み着き、人外魔境と化していったが、神々にとってはむしろ好都合だった。
また、封印は実に絶妙なバランス感覚で我々に力を蓄えさせないように吸い上げ、内部からは絶対破られないように稼働し続けている。
つまり、外部から均衡を破るための力が加えられない限り、復活は不可能だ。
――長い、長い年月が経った。
我々は待った。待ち続けた。復活のチャンスを。数十万年の間、待ち続けていた。
誰も足を踏み入れたがらない魔境の地下で、待っていた。
――――待ち続けた甲斐があった。
丁度二日前、外部に闘いがあり、人間の手練の流れ弾が張り詰めていた封印に当たり、崩した。
ようやく復活できる――と思った矢先に――ソイツラは現れた。
幼体の古代龍と、古代龍に匹敵する実力の人間のメス。
獣人の集団と、その他有象無象の人間。
我から見れば、前者以外は取るに足らん存在だ。
そして前者も、完全に実体を取り戻せば容易く倒せる。
だが――
――あの人型の皮を被った植物はなんだ?
一見、魔獣のように見えるが、本質は全く違う。
そもそもこの世界の魔獣の大半は、我々魔神によって生み出された眷属。
本当に魔獣であれば、呼びかけには応えるはずだ。
――わからぬ。
かつて魔神の軍勢にも、敵対した混沌と秩序の神々の陣営にも、こんな奴はいなかった。
古代龍よりも、
雷となり、戦場を切り裂く人間のメスよりも、
その他の有象無象よりも――あの人型の皮を被った植物が気になる。
行き遅れの更新は明日になります。