二つの影(下)
上空からワイバーンやグリフォンのような、飛行能力ある魔獣は前線を越え、討伐隊へと襲いかかる。
戦場を分断する降り注ぐ落雷も、
一瞬で数百匹が吹っ飛ぶ魔力弾の爆発も、
容易には超えられない深いクレーターも、翼を持つヤツらの障害に足り得ない。
攻撃をかいくぐり、隙間を通るように、少数ではあるが、着実に突破に成功していた。戦況はギリギリの均衡を保ち、いつ崩れてもおかしくはない。
しかし、なかなか押しきれない。
その原因は二つ。
わざと孤立し、右方向の攻撃を一身に引き受けるクラリア王子。
と――
もう片方、奇しくも同じく単身で応戦し、屈強な獣人王子フェロア。
突出した両者は否が応でも魔獣の注目を集めてしまい、真っ先に攻撃される。
「――ふんッ!」
声と共に、フェロア王子の刀は一閃し、ワイバーンの首を切り落とした。
周りはすでに二十以上の死体が転がっており、また一匹新たな死体が仲間入り。
「来いッ!」
返り血を浴びたフサフサの毛皮は湿り、動く度に赤を撒き散らしていく。
頬からは熱気を帯びた汗が滴り落ち、地面を濡らす。
だが、衰えや疲れの様子は一切なかった。
それどころか、動きがますます洗練されて、綺麗な舞踏のようにすら感じさせる。
戦えば戦うほど、鋭さと切れを増し、力をみなぎらせていく。
大勢の敵を前に吠えるその姿は、鬼気迫る凄さがあった。
”――先から猛攻をかけているのに、なぜ未だに倒せない?”
ここに来て、ワイバーン側もようやく異変に気づき始める。
手応えは確かにあった。
最初は押していたし、傷も負わせた。
でも時間の経過と共に、なぜかこの獣人、動きがだんだん良くなっていく。
――負傷しているにもかかわらず、だ。
――限界は近い。
――最後の悪あがきに違いない。
――命の灯を燃やしているだけだ。
魔獣達は、心の中で各々に答えを出した。
それでも、疑問はしこりのように消え去らなかった。
”――なぜ倒れない?”
人間と獣人。
違う種族の二人だけれど、この戦場での突出という点で言えば、両者は極めて似ている。
だが、その本質はとても対照的である。
クラリアのほうが底知れぬ不気味さだとしたら、フェロアはわかりやすい強さなのにカラクリがイマイチよくわからない。
――答えは、フェロアの加護にあった。
行き遅れの更新は明日になります。




