お茶汲み及び雑務担当
青白い稲光が、走る。
ひしめき合い、蠢いている魔獣の群れを切り裂く度に大地に何本も雷を落とし、雷鳴を轟かせながら地下の封印地を揺るがしていく。
電撃を浴び、為す術もなく焼かれ、次々と死んでいく魔獣の大群。
その光景を、私達は遠くから眺めている。
「……凄まじいな。ここまでとは」
ポツリと、クラリア王子が感嘆の声を漏らす。
彼の部下達もライシェの凄まじさに言葉を失い、うなずくことしかできずにいた。
あの中心で縦横無尽に魔獣の大群を蹂躙しているのはもちろん、ライシェ。
エリスミーラが誇る処刑人の実力を初めて見たリラル王国の面々は、驚く。
それは無理もないことだけれど、彼女の実力と戦闘スタイルを知っている私でも、目の前の光景に驚かずにはいられなかった。
何だこのバケモンは――というのが、正直な感想。
そもそも、これでは昔に見た彼女の実力と、差がありすぎる。
あの時はまだ人外だと感じながらも、人間の常識を大きく外れていない。
だけど――今は……。
「あれが本来の実力さ」
ポツリと、古代龍がつぶやいた。
「……本来の? ……これまで隠していたってこと?」
私は、努めて冷静に尋ねる。
「まさか。外とここじゃ、違うさ」
「違う……?」
「あぁ。外で全力を出していたら、周辺が大惨事になるだろう」
「……なるほど」
始めは、ルナディムードが何を言いたいのかよくわからなかったが、理解した。
しかし、となると別の疑問が浮上してくる。
「……ここまでだと、ライシェ一人でも行ける気がするけど……私達いらなくない? 魔神再封印」
「言ったろ? 相性の問題さ。丁度いい、今度はあえて相殺せず、逸らすだけで本来の威力を見せてやる」
「はぁ? 相殺? 逸らす? 何言って――」
言い終わることは、できなかった。
その前に、ズドンッ! と、突如魔獣の海の一角は爆発した。
振動は封印地を揺るがし、パラパラと大小様々な石が落ちてくる。
爆発の中心に、数百匹いたであろう魔獣は一瞬にして消し炭になっていた。
明らかにライシェの雷撃とは違う性質の衝撃に、討伐隊のみんなはざわつく。
「あー、安心しろ、大丈夫だ。今のは魔神の攻撃を、俺はコイっ――聖女様に見せるために相殺しなかっただけだ」
安心させるように、ルナディムードは少し声を張り上げる。
それでみんなは落ち着きを取り戻してくれたが、クラリア王子は苦笑をしながら、苦言を呈した。
「……驚かさないでください、ルナディムード様」
「悪ぃなぁ。文句はリヴィエ聖女様に言ってくれ」
……さり気なく私に押し付けるのはやめなさい。こちらはお茶汲み及び雑務担当、クレーム担当ではありません。
ちなみに一応、彼が古代龍であることを、討伐隊結成の時に、クラリア王子とリラル王国の精鋭、それに獣人王子フェロア達には説明した。
それ以外だと、グラシスさんはもともと知っている。
ライシェには言ってないが、初対面の時の反応で大体は察しているだろう。
なのでこの場にいる全員は、知っている状態。
部外者の両王子に説明したのは、もともとルナディムードには開拓村の保険として機能してもらう私の計画もあり、そうしたほうが都合良いから。
討伐隊結成時に、色々見られてしまったからね。私のマンドラゴラとか。
仇敵と手を組むことになるけどいい? って両王子に確認したら、逆にあの子達は何って聞き返されて、古代龍の部下ということに機転を利かせて説明した。
……まぁ、村人達が知っている以上、どこかで口を滑らせるでしょうし、仕方ない。
古代龍なら、こんなファンシーな見た目の部下達があっても納得だろう。
だって私、秘密バレたくないもん。
まぁ今それは一旦置いといて――
「魔獣の軍勢、先より前へ進んでない?」
私は密かに思っていてあえて口に出さなかったことを、聞いてみた。
行き遅れの更新ですが、忙しいため明日に投稿します。




