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マンドラゴラは入っています




「……どういうこと?」

「……詳しいことは申し上げられません。…………リティ様のほうが説明に適任だと思いますので。……リヴィエ様……そちらの方は?」


 婚約者ってなんのこと?って聞くと、グラシスさんはかしこまった態度で返事をし、私の後ろにいるライシェに視線を向け、逆に尋ねてきた。

 それで察した私は彼に――。


「……えぇ、紹介しますわ。こちらの方は私と同じエリスミーラ神殿に所属の聖女ライシェ様です。今回は私の支部の刺殺官として派遣されてきました」

「……刺、刺殺官、ですか……?」

「えぇ。刺・殺・官ですよ」


 断じて視察官ではありません。

 聞き返してくるグラシスさんにニコリとそう強調すると、彼は納得顔で苦笑いを漏らした。


「様じゃなく、ライシェって呼んで!」


 抗議する刺殺官は無視。


「ライシェ様のご案内を頼みますね。私と違いライシェ様は誰もが認める聖女様ですから、失礼のないようにお願いしますね。ライシェ様、申し訳ありませんが、こちら支部の案内役グラシスさんです。……では」

「はい、かしこまりました、リヴィエ様」

「もうリヴィエちゃん冷たいよぉ……」


 あちこち歩き回られないようにグラシスさんにライシェの監視を頼むと、全く初耳な私の婚約者とやらが待つ場所へ急いで向かった。






「――で、これはどういう状況?」


 グラシスさんとライシェを表の開拓村に残し、岩山に囲まれた盆地の中へ入った私が最初に見たのは――


「……貴殿が、リヴィエ?」


 そう尋ねるのは――

 左側に、一匹の若い獣人の青年と、その部下と思われる数十匹の獣人。、


「はじめまして、私、クラリアと言います、此度の無礼な来訪についてまず詫びます」


 そう自己紹介するのは――

 右側に、一人の青年と、亜麻色のローブを着た数十人の人間の集団。


 両方が道を挟んでお互い睨み合っていた。


 ……いつからここが戦場になっていた?

 手こそ出していないものの、間にある嫌悪な空気は両者の関係は最悪と物語っている。


 獣人と人間、両方の集団に挟まれている私の家へと続く道。

 丁度両者の間と道の中央に、侍女の服を着ているリティが私に向かって、うやうやしく頭を下げて一礼した。


「お帰りなさいませ、リヴィエ様」


 あ、うん、ただいま。最悪なお出迎えありがとう。






「……で、一体これはどういうこと?」


 侍女姿のリティは慣れた手付きで淹れたての紅茶を私と、向こうに座っている獣人の王子両方に置いてから、私の後ろに戻る。


 目の前に置かれた紅茶を、獣人の王子フェロアは若干警戒し、立ち上っている湯気を見つめる。


 あの後、双方のリーダーに勝手に戦闘行為をしないよう求め、リティから話を聞いた私は場所を盆地内の集会所に移し、今はこうして個別に話を聞いている。


「…………いい香りだ」


 フェロアはすぐに飲むことなく、鼻をクンクンさせ、置かれている紅茶の匂いを嗅いだ。


「そう? ありがとう。毒は入ってないから安心してね」


 未だに警戒の眼差しを紅茶と私に向けるフェロアに笑みを向けながらそう告げる。

 改良マンドラゴラは入っているけどね。

 獣人にとってマンドラゴラは毒ではないし、丁度いい機会だから改良完成した最新の品種を彼に食べさせ実験体として……コホン、味見役の彼に振る舞うわ。


「飲まないの?」

「……いただこう」


 紅茶としばらくにらめっこしたフェロアは自分の背後の部下達を一瞥してから、意を決したようにカップを口へと運ぶ。

 おそらくは例え毒だったとしても、部下達がいればなんとかなる算段でしょう。

 大勢の部下に見守られる中、フェロアは一口すすり――。


「――ぬッ!? なんだ!? これは――」

「フェロア様!?」


 慌ててカップを口から離すフェロアを見て、部下達は一斉に驚きの声を上げる。


「――何という美味……!」


 だが次の瞬間、フェロアの言葉を聞いた部下全員は困惑した。


「芳醇な香りの中に力強さがあり、爽やかな味で――」


 お、成功っぽい?


「――少し飲んだだけで全身に力がみなぎってくる!」


 え?


「まるで獣の神フェルラに祝福されているような感覚……!」


 ……失敗かな。

 飲んだだけでパワーアップするような食べ物は食べたくないわ。

 最近前のように動き出すマンドラゴラはなくなったけど、代わりに加護や体を強くしてしまう事が多い。


 はぁー、と心の中でため息を一つ。

 紅茶を一口すすり、話を戻す。


「……フェロア様はなんの目的があって、ここを訪ねたのでしょう?」

「……そ、そうだ。すまぬ、あまりに美味しいから……。……その前に、リヴィエ様は……獣人についてどう思う?」

「……どうって……別に何も」


 迫害されててカワイソウだなとは思うけど。

 フェロアは静かに私を見つめ、口をゆっくりと開いた。


「……リヴィエ様は、敵か味方か?」

「……今の所味方かな」


 今の所はね。


「……では単刀直入に言わせてもらう。我々は一族の幼子のためにやってきた。味方というのであれば、幼子を返してほしい」


 ……ウマとエマのこと?




お知らせです。

次の更新日はクリスマス前後なので、次の週の投稿は休みます。行き遅れの方もです。

申し訳ありません。


メリー・クリスマス。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ところで一級聖女様の性格がこれで聖女の能力は性格似てる女神から与えられる(By古代龍)ってことはひょっとして……女神様……死ぬ程(殺したい程)大好きってレベルで擦り寄ってウゼェ!ってシ…
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