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前衛的なファッションのお方ですね




 口から今の心境――そのすべてを詰め込んだ言葉が、ポロッとこぼれた。


「――はいぃ?」


 真っ白な思考のまま、ゆっくりと後ろへ振り返る。

 そこには――白い思考を更に白く染める奇妙な女性が、立っていた。




 頭はまさに生まれた時のように、純白。

 何も考えられない、という感覚に近い。




 ――洪水のように連続に襲来する出来事、その変化の速さと洪水のように膨大な情報量に、頭がついていけなくなり、パンクしている。


 一体どこから整理すればいいのやら、見当もつかない。


 ……そうね、まずはその女性の外見から理解していこう。


 一言で言うと、とても奇妙だった。


 ……奇妙、ね。

 我ながらかなり言葉のチョイスが甘い気がする。


 それもそのはず。

 だって、その女性――は、ほとんど裸のような状態で立っているから。




 頭には花の冠。


 体は蔦でできたドレスを着ているが、胸元はほとんど開いていて、自己主張が激しすぎるたわわな胸は、申し訳程度な葉っぱで隠している。


 腰以下は蔦のドレスの上に、草で編まれたロングスカートを履いている。

 が、当然のように両側にには大きく開いているスリットがあり、長い脚線美を惜しみもなく見せている。




 ――感謝しなさい、貴女。露出狂とか痴女とか、言わない私の慈悲深さに。

 ……まあ、なんと言うか、見るからにやばい人だ。


 おまけに肌の色もなんだかピンクと緑だし。

 どんな不健康な生活を送っていたらこんな雑草と花みたいな肌になるのよ、とツッコミたい。


 森の中だから?

 フォレスト系ファッション?

 頭の冠もなんだかファンタジー感半端ないし、植物のヒラヒラスケスケドレスって隠す気ある?


 ……深く考えるのやめよう…………。

 ――と言いたいところだが、先女性の口から発せられた言葉が引っかかってしょうがない。


 気の所為や空耳でなければ、おかしな呼び方されませんでした?


 ソウゾウシュサマ……?

 新しい食べ物の名前? 貴重な植物? 新種の魔獣?


 まあ、何であれ、私には関係ない――


「創造主様。この度、ありがとうございます。そして、おめでとうございます」


 なんて考えていると――

 ――女性は、狙ったかのように、うやうやしく頭を――私に向かって下げて一礼した。


 ……わかっていた。そうであってほしい希望的観測ということ。

 でもね? そんなに残酷に、冷酷に、無慈悲に打ち砕かなくても、いいじゃない……。


「創造――、」

「人違いです」


 女性から再び何か言いたい気配を感じ、私は短く言葉で遮った。


 清楚とは無縁で、淑やかとも程遠い野生児だが、痴――コホン、貴女のようなキレイな方と時間を共にした記憶はありません。


 それに、貴女のようなキレイな方ならば、神殿のヤツラは大喜びだろうけれど、私にその呼び方は荷が重すぎる。

 わきまえておりますわ、自分はただのしがない二級聖女でございます。


 だけど、痴――女性は私に否定されて、困った表情を浮かべた。


「いいえ、創造主様、間違いありません。私のことを、お忘れになられたのでしょうか」

「人違いです。そんなボンキュッボンの痴――友達なんていないわよッ」


 森だから、ヌードに近い格好で出歩いているようなハッピーな知り合いはいないわ。

 あえて言わなかったけど、その外見から色気がムンムン噴出してきて、窒息しそうなんです。


 ――この場に男の人がいなくてよかったとつくづく思う。、


 顔は、まあ、格好のせいであんまり直視したくはなかったけど、どう見ても傾国級の美人。

 ボディも、自分に絶対的自信がなきゃ、そんな服は着ないだろうという意志がヒシヒシと感じる。


 ……そんな露出狂一歩手前の服を着ている時点で、すごい自信だもんね。


 神殿の同僚の中、女から見ても美人の人は結構いた。だけど、全員、眼前のこの人に及ばない。

 女性は何度も否定され、それでもなお――


「いいえ、私です。お忘れですか創造主様」


 若干焦った声色になって、身振り手振りで説明する。


「人違いです。それと、その創造主様というのやめてもらえます?」

「ですが――私ですよ。創造主様」


「私私詐欺ですか」

「違います! 私です! 覚えていません? 創造主様は私の敏感な蕾を触りました、――」


「ツボッ――!? 貴女、いくら女性でもセクハラで訴えますよ? 私、エリスミーラの聖女です。バックには世界最大の神殿がいます」


 貞操の危機を感じ、慌てて痴女から数歩下がり、距離を取る。

 ツボミ? 何かの隠語……!?


 離れた私にもどかしさを感じ、説明しようとして痴女が徐々に近づいてくる。


「だから私ッ、ピンクの蕾の子――」

「ピンッッ!?!? 貴女、私が処ッ処ッ処ッ処ッ――処、女だからって、言っていい事と悪い事があるッ! 男の人呼びますわわよ??――いえ、女の人呼びます」


 にじり寄る痴女に、恐怖を感じ、更に下がる。

 なんて卑猥な……ッ! この人、私に何をする気!?


 それに、男を呼んだらコイツの餌にしかならん。

 あの色気の塊を前にして、一瞬で寝返る。余裕で寝返る。頼りにならないし、頼れない。

 呼んだら自分で自分の首を締めるのと同じ。敵を増やすだけだ。


「創造主様……!? どこへ……!?」

「近寄らないでッ」


 にじり寄る露出狂の痴女に、下がる私。

 その時、


「ううっ……」

「――えっ?」


 突如、男の呻き声が足元から聞こえ、驚いて私は――体勢を崩し、仰向けに――倒れていく――。




男の人呼びますわわよ?? は誤字ではありません。パニクってます。

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