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納豆のように粘られるとイライラします




「私は言いましたよね? エリスミーラ神殿の聖女ですって」

「それが胡散臭せぇんだよ。俺、エリスミーラ神殿の聖女を見たことあんだけどさ、そいつはあちこちに金の糸があるローブを着てたぜ? てめえのような見窄らしい地味な灰色のローブとは大違いだ」


 盗賊が得意げに鼻で笑い、一本取ったぞ、さあどうする? 化けの皮剥がしてやると言いたげな表情で威張っている。


 金の糸って……ああ、あの支給品ね。神殿出た瞬間捨てましたがなにか?


 それとあくまで個人的感想だが、いかにも成金の感じで好きではないね、あの支給品のローブ。

 これまでの神殿の威光と偉業を称えている感じがデザインにモロに出てしまい、服を着ているんではなくて、服に着られているようにしか見えない。


「……見た目で判断する人なのね、あなた達は。ではこの人に見覚えはありません?――彼はグラシス、少し前に捕まりました人よ。その時の彼の容姿、思い出してください」


 私はグラシスさんを指差し、盗賊に問いかける。


「……あん? ここに捕まった?……」


 先から威勢よく反論している盗賊はグラシスを見ながら、記憶と照らし合わせている様子だが、どうもよく思い出せないようだ。

 代わりに別の盗賊が、ハッと声を漏らした。


「……あッ!……いや、でも……? まさか?……」


 仲間の反応がおかしいことに気づき、反論している盗賊は尋ねる。


「なんだ?」

「……お前は覚えてねぇみたいだが、アイツ……ここに捕まってた時に、片方の腕なくしてた……」

「それがどうした……? ん? 片腕……?」


 仲間に言われてそれで気づいたのか、盗賊たちの視線はグラシスさんの腕に集まる。


「私が治しました。欠損した人体を元通りに治せる加護といえば――?」


 正確には、私が加護で増やした薬草をたくさん混ぜて作った強力なポーションで直した。


「……っく、だがエリスミーラ神殿が販売してるポーションも治せるぞッ! 俺は騙されんッ」


 ……盗賊のくせに物知りだね。うちの常連客? 神殿が販売している欠損治癒ポーションは相当高価なものだけど。

 まあ、バックに貴族がいるなら、このくらい知っていてもおかしくはないか。


「……えぇ、まあ、いいでしょう。私の所属はこの際置いといて。この子達が隠し子というのは純然たる事実なので、あなた達をカーラント様の前に連れて行けば――」

「ハッ! やれるもんなら――」


「――もしくはここに放置してもいいかなっと。あなた達に捕まり、殺されかけた人たちに任せるのもいいかもしれませんね。私も延々と付き合っていられるほど暇ではありませんので」

「お、脅しには屈しない……ッ!」


 その割に声が震えているけど、大丈夫?

 と、現状に痺れを切らしたのか、グラシスさんは私にこっそりと耳打ちした。


「これじゃ埒が明かないぞ。どうすんだ?」

「……そうですね、少し困りました。背後の貴族がわからないと軍や警備隊に引き渡しても、どうせ釈放されるし、別の国につれていける力は現状ないし……かと言ってここにコイツラを養い続けるのもなんだし……よし、ではこうしましょう!」


 私は盗賊に向き直り、


「盗賊の皆さんにいい知らせです。皆さんの処置は開拓民の皆さんに任せましょう。生かすも殺すも開拓民の皆さん次第――良い関係を築けるといいですね」


 これ以上コイツラに費やす時間はない。さっさと帰って畑の様子確認したい。


 もちろん、任せると言っても、極力死なせないようにと伝えてある。将来の村人を犯罪者にしたくない。人を一度でも殺したらストッパーが外れるからね……カルト野郎たちを見ればわかる。


 私の決定を聞いた開拓民の皆は、ニィっと邪悪な笑みを浮かべた。逆に盗賊たちは顔を青ざめている。


「いや、あの、俺達が悪かった。だから――」


 先までは私のことを疑い、威勢よく反論しているという盗賊は、慌てて態度を改めようとするが――その声は牢屋ににじり寄る村人たちにかき消される。





 アジトを出た私の後ろに、ジェシカ姉さんとグラシスさんは慌てて追いかけてきた。


「いいのか? 万が一の――」

「マンドラゴラを配置しておいた、グラシスさん安心してください」


「そうか」

「それとジェシカ姉さん、アジトに残っている開拓民の晩飯と明日の朝食はお願い。例の食材渡します。それを開拓民の皆さんに食べさせてください」


「またあれ食べられるの!? もう、あのふわとろの食感が忘れられなくて。口に入った瞬間広がる甘さ。とろける柔らかさ。噛んでもいないのに溶けていく。時にはサクサク、時にはとろとろ。ほんのりした甘い香り。まるでさざなみのように続々と私の心を溶かしていく……ああ……ッ! リヴィエ大好き!!!」


 また私の改良マンドラゴラ食べられることに喜び、ジェシカ姉さんはすっかり陶酔した表情で食レポを語る。

 その様子を眺めながら、グラシスさんが尋ねる。


「……前から思ってたけどよ、あれ食ってからジェシカの様子がおかしくなった気がする。お前、一体何を食わせてんだ?」

「ヒ・ミ・ツ」

「……まあ、お前のことだ。毒じゃないだろう……にしても加護の力を強くさせる食材ね。世界樹の実くらいしか思いつかねえけど」


 そう言ってぼやくグラシスさんであった。


 その食材を生み出している本人――私が一番首を傾げている。

 そして人に散々完成品を食べさせておいて、自分は未だに一回も食べてない……。見た目さえなんとかできれば……!


 それにジェシカ姉さんの美味しそうな食レポとトロけちゃう顔を見たら、余計に食べたくなる。

 ……絶対食べてやるからね。




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