家族に相談
「なぜ嫌なんだ?カイン殿とは幼少の頃からの幼馴染だろ?私の知る限りでは礼儀正しく優秀な青年ではないか?」
(それはあの方が巨大な猫を被っているからですわ!!本当はお腹真っ黒の魔王様ですのに〜)
確かに彼は礼儀に厳しいと言われている社交界の貴族の方々からもかなりの高評価を得ている。
話し方は少し低めの声で、決して高圧的に話し方はしない。
(ダンスを踊っている時に、あのお声で耳元をお話された時は〜〜〜!!)
思わず思い出してしまったルナの顔は赤く染まり、プルプルと震える。
王太子殿下の右腕とされ、次期宰相と言われている程頭脳、王国内で数える程しかいない魔法騎士でかなりお強い。
そのため、彼は貴族だけではなく、国王陛下の覚えもかなり良い。
「それにルーちゃん、お母様はカイン様のお顔大好きよ。あんなに見目麗しい男性は中々いらっしゃらいわよ?殿下と並んだお姿はまるで絵画のようよね〜」
ルナの母親のミルファはのんびりしたように言う。
(お母様、イケメン大好きですもんね〜〜〜!)
この国では珍しい黒髪、神秘的なアメジスト瞳。
眼鏡が大変お似合いの知的美人で、少し冷たい印象を受けるが、その冷たさが良いとご婦人から大好評だ。
「お母様・・・殿方はお顔だけではないと思いますよ?」
「あら?ルーちゃんは嫌いなの?」
(大好きですよ〜〜〜!!野性味溢れる殿下と知的美人の彼と親友の社交界の華と言われる程の美女のミラが並んでいると本当に絵画のようですよ!!かなりの眼福です!!)
実際の年齢よりも幼く見えるミルファは、愛らしい仕草で首を傾ける。
いつもは厳しい顔をしているグラバドールは愛しい妻の愛らしさに笑みを浮かべ、自分の横に引き寄せる。ミルファも旦那様に甘える様に微笑み甘受している。
(そこの新婚万年夫婦!子供の前でイチャつかないで!!娘の婚約話を真剣に考えて〜〜〜!!)
こうなってしまってはこの夫婦はもう駄目という事は長年の経験で分かっている。
(駄目だ・・・いまこの場では味方がいない。執事やメイドは私を微笑ましい顔で見ているし、こうなったら!!)
「アルフォンス?もし私がカイン様と結婚したら、アルと離れなければならないの、どうしましょう?」
ミルファの隣で、小さな手を一生懸命使ってクッキーをたべていた弟(5歳)のアルフォンスに声を掛けた。
(あぁ、執事の呆れた視線が痛い!分かっているわよ。バカな事をしているって!でも!でも〜〜!)
姉に声を掛けられたアルフォンスは食べていたクッキーを口に入れて咀嚼する。
その姿は小動物のようで思わず癒されてしまう。
(あぁ、私の可愛い可愛いアルフォンス!天使がいるわ〜!)
執事の視線が痛いので、近づく事は出来ない。本当は抱きしめたい!
「おねえさま、ボクおねえさまがいなくなるのはさみしいですけど、カインおにいさまの事大好きだから、ガマンできます!」
クッキーを食べ終えたアルフォンスは天使のように愛らしい満面の笑みを浮かべて、ルナにとっては絶望的な事を可愛らしく言い放った。
アルフォンスの言葉で固まってしまったルナを横目にアルフォンスは目をキラキラして嬉しそうに話す。
「カインおにいさまはつよくて、カッコいいです!それにカインおにいさまはルーおねえさまをまもってくれるっていってくれました。だいすきなルーおねえさまとカインおにいさまがおとうさまとおかあさまみたいになるなら、ボクうれしいです!」
(あぁ、私の天使が〜〜!純粋で清らかな天使が魔王に懐柔されてしまっている)
「まぁ、アル君はカイン様の事が大好きなのね」
「はい!ぼくもカインおにいさまのようにつよくてカッコよくなりたいです!」
「ルーと結婚したら、カイン殿は本当のお兄様になるぞ」
「ほんとうですか!ボクほんとうにたのしみです!」
家族の嬉しそうな会話に当事者のルナは入っていけない。
固まって動けないルナを尻目にグラバドールは執事に結婚式に必要な物の手配を指示してしまっている。
(ダメです。家族には味方がいませんわ、このままでは私、魔王様と結婚させられる〜〜!!)
ここまで読んで頂いてありがとうございました。