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嫌だって言ってるのに〜
「・・・ルナ」
「嫌です」
「私の話を・・・」
「嫌です」
「しかし、これは」
「お断りします」
厳しい顔をして話すグーリンド王国侯爵家当主グラバドール・ガルドスと愛らしい顔を苦痛に歪めている侯爵家令嬢ルナ・ガルドスの間には緊迫した空気が流れている。
同じ押し問答を繰り返して早一刻。
本来なら娘を溺愛しているグラバドールは娘の願いを叶えてやりたいが、今回は侯爵家として断る訳にはいかない案件だ。
今にも泣きそうな愛娘の顔に内心冷や汗をかきながら、グラバドールは宣言する。
「ルナ、お前は一ヶ月後にファルタナ公爵家次期当主カイン・ファルタナ殿との婚約をする!これはもう決定事項だ!!」
「だから嫌だと言ってるじゃないですか〜〜!!」
父親の宣言を半泣き状態で拒否の言葉を叫ぶ。
これは、婚約者からの重たすぎる愛情(無自覚)から逃げたいご令嬢と既に外堀を完全に塞いで後は捕まえるだけの令息、その状況をほのぼのと見守っている人々のお話。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。