3話 役目
供養の品は両親ということらしい。
ヘロは校長に供養の品を渡さず必要ありませんと伝えていた。
校長は供養する必要がないほど清廉なのだろうとすっかり勘違いしていた。
両親の体を離れた首は無造作に転がる。
体はくたびれて倒れヘロの背には鮮血が降り注ぎ紅く染めた。
校長は戦慄を目の当たりにして叫んで腰を抜かす。
王は驚き後退り歯噛みしヘロを警戒して凝視する。
にわかに輝いていた剣はその輝きを増し、影も出来ないほどに辺りを真っ白に染める。
「汝は何故聖なる剣を血に染めた」
辺りにどこか不自然で超常的な謎の声が聞こえる。
「……まさか!」 「ぁあ……」
「偽の両親を討ち家族の仇を討ちました」
「 ! 」 「なっ!」
「どうか儀を認めてはいただけないでしょうか」
「……ならぬ! 真実もわからぬ今すぐにとはいかぬ。認められぬ!」 「……」
王は憤慨する。
「汝のその事由は認められる」
奇しくも父親の言うように偽りなく告白したことが謎の声に認められたようだ。
「な!? いけません! 復讐で殺人を容認するなど! それでは、それでは復讐で世界が滅びの道を辿りましょう!」「……」
王は偽りない言葉が認められている驚きよりもその残酷な行為に怒りを覚えるようだ。
「事由は真である 在るべきかたちとなり 汝の罪は赦される」
「ありがたく御言葉頂戴いたします」
「な……どうお諌めすればよいのだ……」
謎の声直々の儀の完遂は果たされたと言える。
このままでは復讐が正当化されてしまう。
未知なる存在の一声でこの世の道理をねじ曲げてはいけない。
王はそう焦燥する。
「……王様、どうか考え直されては?」
「何を言う。決して許されぬ! 儀が認められようともこの国に居場所は与えられぬわ!」
「王様……」
「もとより覚悟の上です。不躾ついでに王様に一つお願いが御座います」
「由々しき事態を起こしてまたこの期に及んで呆れる図太さよ」
王は到底扱いきれそうにないヘロに感心すら覚えるようだ。
「その断魔の剣をお譲りいただけないでしょうか」
「……何を言うかと思えばそのようなことか」
「そのまま受け取るがよい」
王は意外な反応を示す。
「元より一子相伝の伝承にはその剣は真に勇者の剣と呼ばれておる」
「殷賑の兆しとして《光に玉音を成す》とある」
「つまりヘロは殷賑をもたらす勇者であるということだ」
「なんですと!?」
伝承もしらない校長はただただ驚くばかりである。
「わしは勇者の在るべき姿を見誤ってはならぬのだ」
「ヘロ。お主には理解できよう?」
王は許すことは出来ない理由を諭すようにヘロに語りかける。
「王様の御慈悲、誠に感慨無量に御座います」
「皆まで言わぬ。ヘロを国外追放とする!使命を果たせ」
「神妙に御請け致します」
そこまで言うと辺りを白めていた光はおとなしくなった。
あまりの状況に校長は濡れた下着に今気づいて寒がっている。
ヘロは校長に近寄り落ちていた鞘を拾って言う。
「今までありがとうございました。この学校が大好きでした」
王はヘロを見送るとしばらく俯いてため息をついた。
「勇者とはかくも険しい道か……」
ヘロの目はまばらに輝き迷いはない。
長くなった西日を一身に受け去っていった。
ー第1章 世界のおわり 完ー
シリアスEnd




