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彼女はへそを出した服を着て、ちょうど小腸を覆う皮膚が日焼けし風にはためいてシャツが捲れると綺麗な色のコントラストを覗かせた。
「ねえ」
赤髪の彼女が言う。
「ん?」
「悪って何だと思う?」
彼女からの急な問いかけに僕は表情を歪ませ、「…あまりいいものじゃあないと思うな」
「そう。でも、どうして?」
「それは…そういうものだからだろうね」
「じゃあ正義は?」
「対局するものだと思うよ」
「どちらか一方のみが存在することはない?」
「おそらくね。ぼくはそう思う。不自由がなければ、自由という言葉も存在しないだろうから」
「常にその状態なら相反する概念はない。そう言いたいのかも知れないけど、それは違うわ」
「どういうこと?」
「だって…」
彼女はおかしそうに表情を和らげ、爆笑した。
「わたしとあなたは違うもの」
ぼくは眉を上げ、「へえ」とだけ言い、それから端末の着信に気づいて取り出し、耳に当てる。
相手は親戚さんだった。
「ああ、はい、どうも。はい、ありがとうございます」
「どうしたの?」
通話を終えると、嬉々した表情で彼女が訊いてくる。
「ん?なんでもないよ。いつものこと」
「いつものことって?」
「ああ。そうかきみはここに引っ越してきて間もないんだったね。じゃあ知らないのかな」
「何か事務的なことなの?」
「違うよ、まあ簡単に言えば褒美かな」
「褒美?」
「そう。だから払うのさ」
「払う?払うって何を?お金とか?」
「そうだよ」
「税金のこと?」
「税金?それは違うよ!税金と言うのは強制だろ?これは違うから」
「そうなの?」
ぼくは悲観する表情で頷く。
「だって褒美なんだよ?それってつまり、すばらしいものだからね」