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地球の墓標、宇宙の海  作者: 冬野夏
episode A -2
64/111

64


「実際、トリックでもなんでもない。それは事実なんだ」

「そんな馬鹿なことが!いいえ、そんなこと、ありえないわ!」

「だが事実であり、きみも目の前で見たはずだ。そして、体験もしたわけなのだからね」

「それでも…」

信じられない!といった思いが募る。

「これは…そう!幻覚!幻覚に決まっています!!」

「集団催眠とでも?」

「それ以外に考えられません!」

「まあ落ち着きたまえ。そしていっぱい、飲んだらどうかね?」

言われて思わず立ち上がってしまっていたことに気づき、座り直すも目の前に置かれている緑茶に手を出す気にはなれない。

「けっこうです」

「何か混入しているとでも?」

「その可能性も大いにあると、今は考えています」

「けれどきみはそれを飲んではいないはずだ。それでも、目の前のことは起こったことに違いはない。つまりは事実…」

「空気中、漂わせていたのかもしれません」

「こいつは驚いたな」

博士は半身を横にし、少し笑った。

「では空気感染とでも?」

「はい」

「面白いね」

真正面に座り直して、にやりとした表情。

「ぼくたちが、きみに対してそんなことをして、なんになる?」

「さあ?私には分かりません。でも、私には分からないこと(・・・・・・・・・・)が重要なのでは(・・・・・・・)?」

睨むように視線を相手の目に向け、外さない。

相手はそこで若干視線を逸らすと「気丈なお嬢さんだ」嘆息染みた声。


「…分かった。信頼されるように、ぼくたちについてを話そうか」

「どっちでもいいですよ」

「まあ聞きなさい。判断するのはそれからでも遅くないはずだ」

「何か妙な行動を」

「しないしない。神に誓って何もしないよ」

「神、ですか」

思わず私は噴出しそうになった。

「ああ、そうだ。気に入ったかい?いい名文句(・・・・・)だろ?」

「そうですね」

思わず雰囲気に流され穏やかに。

「よろしい。では話そう。…といっても、何から話せばいいかな?」

「さっき、そこの人が、”ここはレジスタンスのようなもの”と言っていましたけど?」

「ホウイチがそう言ったのかい?」

そうして博士が視線を横にもたげると、さっきの人はパソコンのような機械を相変わらず操作しており、モニターに向けていた目を翻して振り返り、博士と顔を合わせると「ああ」といって陽気に頷いた。


「じゃあもう分かっているかもしれないけど…」

博士は私のほうへと向き直し、

「ここはレジスタンスとしての集合体だよ」

「いったい何のためになんです?」

「それはもちろん…」

博士は、今度、まるで猫の赤ちゃんを見たときのように表情を緩ませた。



「ロボットに対抗するためさ」





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