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地球の墓標、宇宙の海  作者: 冬野夏
episode A -2
61/111

61


”革命”と表するのは洒落臭いので、ここでは”変革”とする。


それはすでに起こりつつあったことであり、その萌芽さえまったく気づかずに居た。

シロアリが建屋をじわじわと食い尽くそうとしている行為に似ていたとすれば、定かかもしれない。

尤もそれは私だけの問題に思えず、現状を思えば、おおよその人間がそうであったに違いないだろう。



私が二十一歳になる前の時、

自動車の事故はもちろんのこと、公共交通機関における大事故が多発し始めていた。

それは言葉の綾でなく、誇張表現でもない。

日に日に増え、毎日発生しており、事故の増加に死傷者の数も追随した。

事態は一般からして(・・・・・・)深刻と言えた。

当時において毎日のように報道をしていながらも、それはどこか楽観視されており、規制具合も曖昧。

しかしその事実を知ったのは後であり、政府は結局、原因を公には発表していなかったのだから。



事故の多発。

死傷者の増加。

原因は単純だった。




諸原理は、その成り立ちを突如として、崩した。




その結果。

ただそれだけのことに過ぎない。




端的に言えば「1+1=2」の事実が、世界から消失した。




確かに以前の世界においても、

「1+1≠2」

は実際、有り得る数式であった。


それは例えば、

物体Aに対し、X軸へ+1、Y軸に+1の力が加えようが、その物体がそのまま素直に+2動くわけではない。

計算上では正しくても、現実では斜面の角度や重量、物体の質量にも影響受けるため、それは単純にX軸Y軸上を+2進むわけでない。なんともまあシンプルな理由。

もちろん、他の因子・要因も多々あるだろうけれど。

しかしここでは「1+1=1」、つまり「わたしの左手と右手を合わせたら、繋がってひとつになったよ!」というような、頓知めいた話は除くとしよう。


私の住む世界では、事実としての概念として存在していた「1+1=2」は、既に存在しない。

当然、それはこの「1+1=2」に限られたことではなく、

単純無垢に「そうした体系すべては故障した」と言っていいことになる。


先人たちの得た基本知識、研究し探求しては編み出し、その後に多くの人々が追随して勉強してきたおおよその科学的知識は、まるで一夜で倒産した会社の株券の様に、途端に白紙と化し、何の意味も持たないようになった。



するとそこで誰もが阿呆になったかと言われれば、当然そのような自体には陥らない。

人間には思考する力があり、推論することも、推理を行うこともできる、立派な器官(・・)があるのだから。




人は考えた。

そう、先ほどの物体Aの移動に関しての例を逆手に取るようにして。


「物体Aを”X軸へ+1とY軸に+1”、動かそうして力を加えても、素直に+2動くとは限らない。

何故か?それは、物体Aが(・・・・)X軸が(・・・)Y軸が(・・・)それらの言葉(・・・・・・・)以上の意味を(・・・・・・)秘めているからだ(・・・・・・・・)

彼はそう推論する。

「つまりこの場合、言語「X軸」が示すのは、「単なる位置座標」ではなく、そこに包括される意味は「横軸」であり、また物理の場合は何の記号もなく「摩擦力」や「垂直抗力」を考慮する必要性に駆られる。同様に、「Y軸」はその言葉自体に「縦軸」、また他もX軸と同様であり、さらに「重力の影響」なども含まれ、それによって、その場合、「1+1=2」でなくなる自体も在り得る」

すると彼は、ここで安堵した。

「なあんだ。もしかしてこの大混乱は、実はたいしたことではないのかもしれないぞ。昨今の物理法則がすべて狂ってしまったのだとしても、それは定義・定数その他何らかの影響・変化によるものであり、観測、計算次第ですぐに修正が効くはずだ!」

なるほど。

確かに世界は収束に向うように思われた。



ほんの一時は。




「と、ここまでがその概略さ。どう?わかったかい?」

チャーリーと呼ばれる博士は、私にこう説明して一息つくと、目の前に置かれた緑茶を啜り、満足そうに「はぁー温まるねえ」と声を出した。





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