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顔に寒気と息苦しさを感じて、思わす体が飛び起きた。
「…起きた?」
はあはあ、と呼吸が荒く、苦しさを未だ味わっていると、横にウソレとバケツがあった。
怪訝な顔で、じぃとこちらを見つめてくる。
その顔は童顔であり幼く、随分と見慣れたもの。
「…若返った?」
思わず訊けば「馬鹿っ!」と彼女が言い、
「あなた、死に掛けてたのよ!」
という。
「えっ?どういうこと?」
「簡単なこと」
そう言って彼女は背を向けるように振りかえり、ぼくも目で追うと死体の山。
ウソレは半身を翻すようにして横顔はこちらに向けてくる。
左目のみがぼくを捕らえては、顎で先を促した。
釣られて彼方の先を見る。
「えっ?あれって…?」
夕暮れが地平線に沿うように、赤みをまとった情景は先が揺らめき、それが燦々と燃え上がる炎と察するに時間はさほど必要としなかった。
「…か、火事じゃないか!!」
朦朧とした意識は一気に消し飛び、先の光景に恐怖と動揺を入り混ぜて得た。
俯瞰的に状況を考えれば、どう見たってあの燃え上がる辺りは、町のある場所だった!
「な、なんで!?どうしてこんなことに!?」
取り乱して首を左右に振れば、”ポンっ”と軽く頭を叩かれ、
「落ち着きなさい!」
ウソレが言う。
たった十五歳ぐらいに見える少女の姿でだ。
「どうして落ち着いて居れてる!?だって、あそこにはカヌレさんや町の人が…」
「いいのよ」
「えっ!?だから、どうして!?」
「…町全体」
彼女の言葉に「何だって!?」とぼくに言わさず、言葉を続けた。
「…町全体、全員が魔物だったのよ!」
「なんだって!?」
驚くぼくの表情を見てウソレは呆れたように「はあ」吐息を出し、
「気づかなかったの?あなた、もう少しで殺されてたわよ!?」
「そう…なのか?」
彼女は頷く。
「まったく頼りない!」
「…ごめん、助けてくれたのか?」
彼女は無言で頷く。
「ありがとう」
「…どういたしまして」
それから二人で炎のほうを眺め、
炎の中からは、女性の甲高い声による賛美歌が空耳的に聞こえ続けた。
「きみは死んだんじゃないのか?」
ぼくが訊くとウソレは真剣な顔をして
「わたしは生き返った。わたしは不老不死なのよ」
と言う。
ぼくがその理由を追求する前に彼女は言葉を続け、
「不老不死になるには二種類の方法があるわ。一つは概念的。つまり、生前に残したものが生き続けること。たとえば、人に与えた記憶や、偉大な発明、著作物などもそうね。それらは概念としてだけど、ずっと人々の間で生き続けるわ。それが物としても記憶としても完全に消えるまではね。そしてもう一つは言葉通りの不老不死。もっとも」
そこでウソレは吹き出すように笑い、
「『言葉通り』っていうところが、大いに誤謬なんだけどね」
と可笑しそうにゲラゲラ笑った。
それから笑い声が止むと、ぼくらはその場を後にしようと行動を開始した。




