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地球の墓標、宇宙の海  作者: 冬野夏
プロローグ
4/111

4


自宅に着く頃には日をまたいでいたのだけど、良平はまだ起きていた。

部屋の電気もついており、ノックするとすぐに出てきては別段、眠そうにもしておらず手提げ袋を興味深そうに見つめてきた。

「これおみやげ」

「んっありが…って!?これってまさか!!」

袋に表示される柄絵、店頭の旗にもあったエンブレムを見て良平は上擦った声を出した。

「ああ、うんそうだよ。たぶんその思ったので合ってる」

「じゃあ!あの!コロニー2145の!!?」

「そうだよ」

「カレーパンだああ!!」

「そこまで喜んでくれるなら何よりだ。お土産冥利につきるよ」

「当然だろ!お前、俺がめざしてる職業、知ってるだろ?」

「えーと、カレーパン屋?」

「そこまで集中狙いはしとらんわ!」

「知ってるよ、パン屋だろ?」

「…ああ。そしてコロニー2145のパン屋って言ったら、業界内でも有名な店だ」

「そうなのか?」

「そうだ。まったく、あの店で師弟制度を決め込めたら最高なのにな!」

「頼んでやろうか?」

「ぜひとも…って、今なんていった!?!?」

「いやだから、頼んでやろうか?」

「お前、あの店のシェフ、アイガーさんと知り合いなのか?」

「あのおっさん、アイガーって言うのか」

「そんなことも…なんだ冗談か」

「いいや、あそこの店長さんとは仲良くなったんでね」

「マジか!?」

頷く。興奮して震える姿が見て取れた。

「そういえば、あの店長こまってたぞ」

「困ってた?」

「うん、まあ正確に言えば、鬱憤が溜まっているというか…」

「どうして?」

「あのコロニーに行ったことは?」

良平は首を横に振って「ないが…それがどうした?」

「あそこって、国営放送があるんだ」

「国営放送?ふーん、変わってるな」

「で、その国営放送なんだが…有料なんだそうだ」

「有料?それもまた随分変わってるな。でもそれがどうした?有料でいやなら、別に見なければいいじゃないか?」

そこで店長の気持ちが分かって憑依したように顔がニヤけて、そのキョトン顔に言ってやった。

「その放送な、見ても見なくても有料なんだぜ!」

「なっ!?」

良平もさすがに驚いた表情を示し、期待通りの反応に俺もまた猫のごとく喉を鳴らしそうになる。

「それも結構な金額をだ。拒否権はない」

「…狂ってる」

「だろ?店長が憤っている理由もよくわかるってもんだ」

「で?」

「うん?」

「何が言いたいんだ?」

「もうわかるだろ」

ぼくがおちょくるように言うと、良平は頷きながら目をそらす。

「…いいアイデアでもあるのか?」

「まあね」

帰りのバス内は暇だったから、実際にそのことばかりを考えていたのだ。

「じゃあその有料放送をどうにかできると?」

「たぶん。でも、そのためには良平の協力が必要になるけど」

「いいぜもちろん。それで気に入ってもらえて、アイガーさんの弟子になれたら万々歳だからな。でも、それで…」

「で?」

「お前のほうにはメリットあるのか?」

いつもどおり良平はフェアな関係を望み、貸し借りを嫌う。

そのため心配そうに言うので、

「ああ、まあね」とぼくは返事する。

「本当か?で、それは?」

「就職祝いの酒が飲めるってことさ」



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