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地球の墓標、宇宙の海  作者: 冬野夏
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機械猫の名前は”メディ”になった。


わたしが名付け親だ。

すんなりとこの名前が受け入れられたのは、アイリスは名前をつけることに関心がなく<わたしも本心としては同様だったが、便宜上必要だと所長に言われたため提案した>、雛尖のほうはずっと機械猫の頭を撫でては「名前?なんでもいいよ!」とこちらも投げやりで役に立たず。

どうしてこの名前かと問われれば、それはインスピレーションであって、思いつき。

特に理由はなかった。


けれど名前と言うのは、本来このようなものではないか?


「メディ、か…まあ、少し変わった名前だが、いいじゃないか」

言葉に反して所長は一瞬、表情を曇らせてたのをわたしは見逃さなかった。

されど追求するほどの事でもないので受け流し、「よかったな、メディ!」と次には雛尖に抱き上げられている機械猫に向けて言い、「はい…よかったです」と途切れ途切れの声で自身の存在性を示す機械ね…メディ。


「よろしくね!メディ」

次には雛尖が抱き掲げた機械…メディを今度、お姫様抱っこするように仰向けの形で腕の中へ抱きかかえ、「ふへへ」と妙な笑いと湾曲した口の表情を供にしてメディのお腹めざして手を伸ばし、触ろうとする<実際、止められず>ので「わ、わわ、やめてやめて」と機…メディは小さな悲鳴を上げた。


「それで所長、犯人は何処に行ったのよ?」

その光景を横目にしていたアイリスが、すぼめきった口元を十分に呈し、呆れの感情さえ飽き飽きしたようにしてから気だるそうに口を開いた。


「それだが、まだ情報に乏しい」

進展製のない所長の返事には、微かな溜め息混じりのタバコ臭が微かに漂う。

「ああ、すまんね。でも無害だから大丈夫!」

「臭いまで正確に再現する必要があるんですかね?」

コホっ、コホっ、と二回、わざと小さく咳き込み言うも、「風情みたいなものだからな。これがないとなんかこう、もの足りんのだよ」と悪びれた様子はない。


「時期、慣れるわよ」

アイリスがわたしの背をポンと叩き、「さあ行くわよ!」と急遽やる気の産声を上げる。

すぐ次に目配せして行動を促し、それに従いわたしと雛尖、その腕に抱かれたままのメディと共に所長のデスクを後にする。

先頭を切ってアイリスが廊下を進み、「急にやる気なのね?」と訊くと、すれ違う他の職員が見えなくなったところで身を寄せ、「なあに、用事を思い出したのよ。早く行かないとだったからね」

声を潜めて表情を和らげた。


「きゅうけいじかんはしゅうりょうのはずです」

メディが抱きかかえられたまま、雛尖の腕の中から顔をヌッと出して言い、「まあ!真面目なのね!メディちゃんは!」とその頭を雛尖がまた魔法のランプみたいに何度も撫でている。

「くそったれな付き添いね」

はあ、メディに目を落としながらアイリスは溜め息を吐くと「いい!この班で一番偉いのは私よ!」とメディの額に人差し指を当てながら宣告。


「でーたでは、はんちょうのとりきめはさだめられていないです」

「黙りな機械猫公!ここでは私が一番のベテラン。機械の中じゃあ(・・・・・・・)どうか知らないけど(・・・・・・・・)人間の世界には(・・・・・・・)人間のルール(・・・・・・)があるの!いい?わかった!?」

「りかいしかねます。しかねます」

「まったくこの機械猫は!」

手を振り上げ、振りかざす前には「やめて!」と遮るように雛尖がメディを抱きかかえたまま身を翻して背を向けた。

アイリスはその背中を目の前に捕らえて腕を止め、チッ、と舌打ちをする。


「さすがにやり過ぎじゃない?」

間に割って入り、アイリスへ咎める様に注意をすると、ふん、と声を鳴らしてそっぽを向き「あんたはどっちの味方なのよ?」と吐き捨てるように言葉を漏らす。


「それはとうぜん…」

思いがけず口ごもってしまい、返答がすぐに出ず微かな沈黙の間、気まずさよりも動揺というか、正直に言って、この状況でどちらの味方をすればいいのか?迷い行動に示しあぐねていた。


ビー、ビー、とやかましい音が、き…メディの体から発せられ、「じけんです!じけんです!」と喚くように言う。

「その音を聞けば寝てたってわかるわよ!」

未だ、優れぬ情緒を示す中でアイリスが口を尖らせて言えば、


「ほんとうメディちゃん!?」

と雛尖はあいも変わらず媚びるような表情に猫撫で声を出し、男受けの良さそうな態度をこの建物に入って以来、ずっと継続しており「何を企んでいるの?」と思わず訊きたくなるのを堪え我慢し続けている。


「げんばへはなびであんないします。きょりはとおくありません。すぐにしゅっぱつするべきです。さあはやくくるまへ!」

機械猫の喚きに従い、わたしたちは駐車場に向い、再びパトカーへと乗り込んだ。



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