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地球の墓標、宇宙の海  作者: 冬野夏
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声をかけられギクリとして動きを止めて、ぎこちなく扉のほうを向くと、

さっきの女の子より大きな少女が立っていた。

警戒するよう扉に身を潜めて顔を出し、こちらの様子を伺うようにしている。


「いや、あの、別に…」

怪しさたっぷりの返事を口から漏らし、その効果は絶大。

ゆっくりと慎重にその少女は入って来て、ベッドの横で立ち止まると、じいと目を少し細めてこちらを見下ろす形。


「…わたしはエリスの姉で、エマリスといいます」

こちらは頷くのみ。

ただ、ごくんと唾を飲み喉を鳴らしてしまい、聞こえなかったらこれ幸いと思う。

エリスの姉であると名乗った”エマリス”とかいう少女は妹より幾分も身長が高く、見る限りでは158cmほどの身長。しかし身体のラインに関しては、妹に比べると顕著であって分かりやすい。随分と発育は良いみたい。

義務的な笑みに頬を和らげ、えくぼを見せる表情に惹かれそうになる。

その顔は妹と比べて随分と大人びてはいるが、微かに残るそばかすと、屈託のない張りの肌具合が幼さを感じさせた。

「あ、どうも。はじめまして。ぼくの名前は」

ベッドに居座ったまま自己紹介するのも気が引けたが、それ以上に、わざわざ退いてもらってまで立ち上がる気にはなれず。ただその場で頭を下げて挨拶をする。


「そうですか…それで、体の具合はどうですか?」

エマリスはベッドへ寄り添うように真横へ来て、屈みこむとベッドに座るぼくへ視線を合わせてくる。


「…なんとか大丈夫みたいです」

本当なら自身の気丈さを誇示しようとベッドから立ち上がり「ぜんぜん大丈夫っ!」とでも言って気丈な姿を見せてやりたいけれど、あいにく裸であって、すると露出狂となるチャンスはあるが犯罪者に甘んじるつもりはなかった。

ここで「下半身に自信がない?」なんて問うのは無粋なことだ。



「そうですか。良かった」

エマリスは両手を合わせて今度は虚偽と思えぬ輝かしい笑顔を呈すると、後光が差して見えたほど。というか、実際に後光は差していて自分が「急に敬虔性を得た!?」と言うことでなければ、単に後ろの扉がより開かれており、そこに扉をより開放した妹が立っていた。

ちょこちょこと足取りすばやく入って来ると姉の隣に来て、はにかむような顔。

まるで冷蔵庫から予想外にプリンを発見したような表情であり、狡猾ささえ伝わってくる。


「姉さま、どうしますか?」

「そうね…とりあえず明日になったら村長様のところへ行きましょう」

姉妹の会話をじっと見ていると、ぼくの方へ四つの目玉が向き、

「一緒に行ってもらえますか?」

「もちろん。それより、助けて頂いてありがとうございます」

「いえ、そんな、当然のことをしたまでです」

そういって姉は女神のような笑顔を見せ、ぼくの手を握ってくる。

予想外に大胆な行動、体が火照り今にも胸は破裂しそうで、心臓に持病がないことを感謝した。


「だ、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですよ!?」

それはあなたが原因ですよ、とはさすがに口が裂けても言えず、寧ろ照れていることに照れてさらに火照るという悪循環。


「…ええ、まあ、大丈夫です」

ぼくは握った手を見ながら言葉を返す。

背に汗がじんわり割り込んでくると裸であるのを嫌でも実感させてきた。


「それより、ぼくの服は…」

「ああ、それでしたら」

エマリスは振り返って妹を見る。

「私がちゃんと洗濯しておいたよ!」

エリスが得意げな声を聞かせる。

「えっ!」と驚けば「ごめんなさい。ぼろぼろの服で倒れていたから…」

「じ、じゃあ…」

「脱がせてもらいました」

なん…だと!?と漏らさずとも複雑な心境。少なくとも、嘆きではないのだけど。

既に羞恥心は消え失せそうで、生まれたときの姿を目の前にいる少女二人に見られているということに対する感情は麻痺しており、すると毅然とした態度で「どうだった?」等と訊ねるユーモア性を思い浮かべるがそれが単なる自分への陵辱になる可能性と、カラスに荒らされたゴミ袋を見るような目つきを向けられる事を恐れて無駄な発言は控えた。



「あっ」


ぐうぅぅぅ、と腹の音がなり、キョトン顔の二人。

打って変わって、次に波打つようにクスクス笑う姉妹。


「エリス!」

「はい、姉さま!」

そういってエリスは駆けて出て行き、


「今、なにか着るものを持ってきますね」とエアリス。

「何からなにまでありがとうございます。このご恩は…」

「あら」

そう言って言葉を遮るので「?」状態で閉口してしまう。

「その何からなにまで、は、この後も続くけど、いいかしら?」

その言葉に疑問符打つ前に、空腹をくすぐる様な良い匂いが漂ってくる。


「ごはんにしよう姉さま!それに、旅の方!」

服を持って駆け込んできたエリスが言い、エマリスの笑顔が目に焼き付いた。




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