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なにやら大きな物音がして外に出ると、雨が降りはじめており予報ではそのような宣言はなかったと記憶していた。
故障?
そう思わせた時分、目先の広場では見たことのないような人だかりが。
群集が囲むようにしているところを僅かに掻き分けて前に進むと、環になっている中央。
凛とした美しい女性が立っており、熊のような生物と抱き合っていた。
そのハグが解かれると女性は仰ぎ見るように顔を空へ向けた。
彼女の顔に雨が降り注ぐ。
頬を伝って流れ続ける。
それでも空を見続ける。
まるでそこに、なにかあるように。
女性は顎を引いた。
真っ直ぐな視線がぶつかり、目が合った。
女性はゆっくりとこちらへ向けて歩み寄ってくる。
揺らぐことなく足取りは強健で、一歩、一歩、ゆっくりと確実に。
いよいよ目の前にまで来る。表情をさっきと変えていない。
対峙するように。
腕を伸ばせば頬にまでも触れられるほどの距離。
対称性な、美しい顔をそっと近づける。
彼女はそこでようやく有機物らしく、微かに微笑む。
目を細くして。
嬉しそうに笑う。
その様は子供のように無邪気に映り、首を微かに傾け、歯並びを見せるように口角を少し上げた。
次に口を開く。
「こんにちわ」
声は表情に反して微かに震えて聞こえた。
彼女の顔からは、雨の雫が頬を伝って落ち続けていた。




