工場の捜索
ティアゴとの戦いから一夜明けた。
匿名の通報という事もあり、工場には国の捜索隊が入っていた。
一方のアレイシャ達は次の国であるミクダニアに向かう準備を進める。
明日にも国境を抜けミクダニアに入るべく飛行船の準備も進む。
「それで、エロイーズは結局何者なんですか?答えていただけますよね?」
「私はエメラダ教のスパイよ、それ以上でも以下でもないわ」
「あっさり喋るのね」
「もっと隠すものだと思っていましたが」
意外にもあっさり喋るエロイーズ。
ヒルデはそれに対し何かと問う。
「あなたは何の目的でアレイシャ様に近づいたのですか?返答次第では…」
「興味があったからよ、死んだはずの騎士様が突然生きて現れたってね」
「私もエロイーズには興味はあるのよね、エメラダ教にもね」
「結局二人は利害関係の一致という事ですか?」
大体はそんなところだ。
エロイーズはアレイシャを知ってて利用しているし、アレイシャも同じだ。
「お嬢様を利用していると、危害は加えていないようですが」
「大切な人に傷なんか付けられるわけないじゃない」
「意外と恋人になりそうなのかもね」
「アレイシャさんもはぐらかさない方が…」
アレイシャ本人はそれも意外と楽しそうにしている。
とはいえヒルデはそのエロイーズにどうにも気を許せないらしい。
それもそうだ、本人が自分はスパイだと言っているのだ。
いつ裏切られるかも分からないし、寝首をかかれるかもしれない。
だからこそヒルデはエロイーズを常に警戒している。
スパイを同行させる事自体危険な行為だと知っているのだ。
「だったらここで別れてもいいのよ?その代わり情報網はなくなるけどね」
「いいでしょう、同行する事自体は私は構いません、ですが変な真似をすれば…」
「ヒルデは私の事になるとどうにもこんな感じなのよね」
「過保護というかなんというか」
ヒルデの気持ちも分からなくはない。
昔から尽くしてきた主人がスパイと仲良くしているのだ。
何か危険があったら従者としての面目が立たない。
だからこそヒルデはエロイーズに心を許せないのだ。
「だから危害を加えるつもりはないわよ、それなら証明するわよ?」
「ほう、では別に体を傷つけろとは言いません、ただし盾になる覚悟はありますね?」
「エロイーズに私の盾になれってヒルデも無理な事を言うものね」
「肉盾にでもするつもりですか」
ヒルデも無茶苦茶を言うが、それもアレイシャを心配しているからだ。
エロイーズもそれなら好きなだけ自分を利用してかまわないと言う。
「だったらボロ雑巾になるまで利用してくれていいわよ、それが証明」
「いいでしょう、あなたのコネクションは利用価値は大いにありますからね」
「まあ今までもそれに助けられてきたのは事実だものね」
「そうですね、だからやっぱり必要です、エロイーズさんが」
とりあえずはそれで話はまとまった。
エロイーズも信じろとは言わないがそれでもついてくると。
ヒルデもエロイーズのコネクションには目を見張っているのだ。
だからこそヒルデもそんなエロイーズを利用する事にした。
そんな中エイルが飛空艇の整備を終える。
セクネスとアナスティアも食料などを買い溜めてきてくれた。
「さて、いつでも飛び立てるわよ」
「食料も買い溜めてきました、保存の利くものでしばらくは持ちますよ」
「それで国境に移動するんでしょ」
「ええ、明日の朝には飛び立つわ」
そうして次の目的地へ進む準備が整う。
次の目的地はミクダニア、その国に何が待つのか。
「それで明日の朝なら今日は少し贅沢する?」
「それもいいわね、ただしエイルは食べすぎて店を泣かせないように」
「工場の捜索は国に任せてね」
「ではどこか少しお高いお店でも探しにいくとしますか」
そうして工場の捜索は国の方に任せ今夜は贅沢をする事に。
だが気になるのはやはり天使様という存在。
ゼスフィの言う邪神の力を与えられる天使様とは何者なのか。
それがどうしても引っかかり続けている。
この旅でそれの真実に近づけるのか、アレイシャ達の旅はまだ序盤である。