異形の工場長
翌日の夜再び工場へと出向くアレイシャ達。
セクネス達には内緒にした上でやってきた。
そして天使様とは何者なのか。
工場長もまたそんな天使様に力を授かっているのか。
「よく来ましたね」
「さて、話していただきますよ、天使様とは何者ですか」
「あんたがそいつから何かをもらってるのは知ってんのよ」
「その前にこの工場の事もね」
そして工場長は話し始める。
この工場の理由を。
「この工場は天使様に建てるように言われましてね、作っているものもです」
「その天使様が人肉缶詰めを作れって?とんだ悪趣味ね」
「少なくともまともな天使様ではなさそうね」
「しかしなぜその天使様は非人道的な事を…トネオのときといい…」
工場長曰くその天使様は救済を語っているらしい。
救済のためには人を減らさねばならないと。
「人を減らすのが救済?ふざけたもんね」
「ええ、少なくともそんな救済を認めるわけには参りません」
「つまり私をここで討つと?交渉決裂でよろしいですか?」
「そうだとしたら?」
それに対し工場長は小さく笑みを浮かべる。
そして見せたのはアレクシスと同じその異形だった。
「ならばここであなた達を殺し、缶詰めにするまで、このティアゴがね」
「その腕は…まさか…」
「ヒルデ?どうしたの?」
「やはり神の力…それも邪神の…」
そして工場長ことティアゴはアレイシャ達に襲いかかる。
当然それに応戦する事となる。
「はっ!」
「っと、ほらほら!」
「あのとき私の仲間達を…その異形が…ならばそれを吐かせるまで!」
「ヒルデさん?おっと」
最初からフルスロットルで襲いかかるティアゴ。
アレクシスは二時間は持ったがフルスロットルではもっと早く力に飲まれる。
それを決着とすべく攻撃を徹底的に回避しつつ応戦する。
だがティアゴの猛攻は続く。
「どうしました!遅いですよ!」
「その異形について…意地でも吐かせてみせる!」
「あのヒルデがこんな熱くなってる…あの異形に何か過去があるの?」
「闇の魔手よ、絡め取れ!」
ゼスフィの魔法がティアゴの動きを拘束する。
だがそれを簡単に振りほどいてそのまま攻め立てる。
そのまま戦いは一時間ほど続いた。
そしてタイムリミットは訪れる。
「ぐうっ、こんな…馬鹿な…」
「力に飲まれる…人にあの力は手に余るのですよ」
「消える前に吐きなさい、その異形は…私の昔の仲間を殺したものですか」
「ヒルデの昔の仲間?」
だが工場長は不敵に笑う。
ヒルデの過去など知らぬと、そしてそのまま力は彼を飲み込んでいった。
「私など所詮は捨て駒…ククク、工場は好きにしなさい…ハハハハハッ!!」
「っ!?」
「力に飲まれましたね」
「そりゃあんなフルスロットルなんだから当然よね」
ティアゴはそのまま消滅した。
そして工場の全機能を停止させあとは国の調査を待つ事となる。
引き上げる道中で気になった事。
それはあの異形にヒルデの過去の何かがある事だと。
「ねえ、ヒルデ、言いたくないなら無理には訊かないけど…」
「私の過去の事ですか?そのうちお話しますよ」
「そのうちねぇ、でもあの異形を見て明らかに激昂してたわよ」
「普段は冷静で表情すら崩さないヒルデさんがあんなになるなんて…」
ヒルデの過去。
あの異形に仲間を殺されたと戦いの中で言っていた。
つまり過去に何かしらの戦いに身を置いていた。
そしてその戦いであの異形に仲間を殺されたのだろう。
言葉から推測出来るのはそれが限界である。
いつかはそれを話してくれると信じて。
「ヒルデも私もその眼帯の下に過去があるって事よね、結局は」
「そうなるでしょうね、眼帯は過去を隠すためのもの、ですか」
「眼帯の下にある過去、ヒルデもエロイーズも…」
「人には複雑な何かがある、それは多くの人が抱えるものですか」
そうしてそのまま宿へと戻る。
宿に戻りそのまま床に就く。
だがどうしても気になっている。
天使様とは何者なのか、なぜあの力を与えられるのかという事を。
ゼスフィの言う邪神の力、天使と邪神の関係性も気になるところである。