隣国の影響
バルギニア国内を旅するアレイシャ達。
現在は小国の一つセルゲンに来ている。
だが国の情勢は相変わらず不穏な空気が漂う。
それはトネオでの出来事がモロに出ていた。
「相変わらずって感じね」
「そうね、トネオが隣国だけに他人事じゃないというか」
「まあ隣国というのは不仲でも気にするしかないのですよ」
「何かあったときに巻き込まれるから、よね」
その通りである。
隣国とは例え不仲だろうと何かあれば巻き込まれる、それは国の宿命だ。
「まあ問題を考えてもそこまで大きな飛び火はしないと思いますが」
「ヒルデが言うならそうなのかしら」
「だと思いますけど」
「ヒルデさんは不思議な人です」
そうして小国の中を散策する。
子供達は相変わらずだが、大人達はどこか不安げだ。
それも無理はないのだろう。
隣国で突然の爆撃など不安にならないはずがない。
話に耳を傾けると外交官が交渉には出ているという。
だがロサニアはトネオに対して強硬的な姿勢を崩していないという。
ヒルデ曰くロサニアは元々外交の上手さには定評があるらしい。
つまりトネオが折れるまで解決しないと見ていいとの事だ。
「ロサニアってそんな国なのね」
「ロサニアは独裁国家ですからね、まあ観光などは出来ますし閉鎖的ではないだけです」
「とはいえロサニアで反政府活動とかしたら消されるって有名よ」
「怖いわね、独裁国家ってそういうものなの?」
ヒルデとエイルが言うには思想を押し付けるのが独裁国家らしい。
それ以外では国としては特に他の国とは変わらない点も多いとか。
観光は普通に出来るがある程度の制限はつく。
国の機密に関わらない場所なら基本自由に見て回れるのもあるそうだ。
「ふーん、国民を虐げるようなのが独裁国家だと思ってたわ」
「寧ろ国民を虐げる以前に偉い人が関心すら示さない事の方が多いですよ」
「なんか意外な話ね」
「貧しい国民がいたとしても無関心であり続ける、みたいなね」
要するに上が肥え太った豚になるのが独裁国家という事か。
だがそれはイメージにすぎないとヒルデは言う。
特にロサニアの場合は国のトップが戦った方が早いとすら言われる武人らしい。
そういう意味でも世界は広いのだ。
「なんかロサニアっておっかない国ねぇ」
「ロサニアは言うならば蛇ですよ、それに睨まれたらあとはお察しです」
「的確な例えね、それ」
「ロサニアは蛇、と」
そんな隣国の情勢も少しずつ入ってくる。
確かに粛清するようにとの命令は受けた。
だが最終的な実行はあのアレクシスがやった事である。
最初から仕組まれていた以上エロイーズ達に非はないと思われる。
「まあ今のところは平気と思っておいていいと思いますよ」
「そうね、そこは外交官の仕事だもの」
「外交官の仕事ね」
「餅は餅屋って事よ」
そうして少し散策して食べ物を買ってそれを堪能する。
この国の乳製品はアイスもチーズもなんでも美味しい。
そしてエイルは相変わらずよく食べる。
抑えてはいるらしいが、食欲は恐ろしいものだ。
「エロイーズ、無理しなくていいのよ?」
「うっさい、美味しいんだから食うわよ」
「お腹がゆるくなるのに大変ね」
「というか嫌いではなく体が苦手としているだけのようですね」
エロイーズもアイスやチーズは好きらしい。
だがそれによりお腹がゆるくなるため仕事が近いときは食べないだけだ。
それ以外のときは普通にアイスも食べるしミルクも飲む。
その結果トイレでお腹をゴロゴロ言わせている事も多い。
アレイシャ達は無理はしなくていいと言うものの本人は好きだから食うという。
本末転倒な感じはするが本人がそれでいいならいいのか。
「さて、食べ終えたら次の小国に向かいましょ」
「そうね、うぐっ、お腹が…少し外すわ…」
「ああなるって分かってるのに大変よね」
「エロイーズさんは胃腸が弱いんでしょうね、恐らく」
そうしてエロイーズはトイレでお腹をゴロゴロ言わせている。
戻ってきたあとは次の小国に向けて飛び立つ。
隣国の不安な情勢も伝わる中この国を抜けるべく先に進むのである。