表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/230

力に飲まれる

アレクシスの件から一夜が明けた。

その日も何事もなかったかのように観光を済ませる。

そしてその日の夜、再び同じメンツで廃教会へ。

そこでアレクシスになんとしても話を聞き出すのだ。


「さて、エイル、みんなは寝てるわね?」

「ええ、もし起きたら適当にはぐらかしておくわ」

「ご免なさいね、そっちは飛行船の整備とか適当に理由つけておいて」

「では行ってきます」


そうしてアレクシスの待つという廃教会へと向かう。

だがこの国で教会というのも少し引っかかる。


「来ましたか、待っていましたよ」

「今夜こそはあんたを粛清してやるわ」

「その力の事も聞き出してあげます」

「今回は前回のようにはいかないわよ」


そうして武器を構える。

アレクシスもその異形の手を解放し戦いが始まる。


「ふっ!」

「遅いですよ、せあっ!」

「させるか!」

「死神の腕よ、絡め取れ!」


ゼスフィの魔法でその動きを拘束される。

だがそれをいとも簡単に振り払う辺り、力の使い方は理解しているようだ。


「散れ、はあっ!」

「っ!?」

「小賢しい真似を…」

「あなた、力を使いすぎるとそれに飲まれますよ!」


アレクシスは少し間を置いて言う。

だからなんだと。


その目にはどこか憎しみにも似たものが見えた。

彼にも理由がある、そういう事か。


「私はね、力を求めたんですよ、憎い奴らをこの手で皆殺しにするために」

「憎い奴ら?まさかロサニアかしら」

「それで軍人になってそれを利用したとでも」

「憎しみが全ての原動力ですか、それは実に素晴らしい動機ではないですか」


アレクシスは元ロサニア人らしい。

だが家族は国で粛清されたらしい。


それからこの国で軍人になりそれを利用してロサニアをぶっ潰す。

そう憎しみだけを生きる意味として今まで生きてきた。


そして力を求めこの力を得たという。

それは憎しみに駆られた復讐者というところか。


「ふふ、この戦いが終わるタイミングでロサニアに爆撃が始まる、遅いのですよ」

「なっ!?あんた…」

「ここで自分を倒してももう止まらないと?」

「そんなの関係ないわ、復讐なんて素敵な理由、私はその計算高さに敬意を払うわよ」


そしてアレクシスは力をさらに高める。

だがそんなに力を高めればそれに飲まれる可能性も高まるのだ。


「元々死など覚悟の上、ならば華やかに散ってあげますよ」

「面白いわ、ならこっちもその心意気に精一杯応えてあげる」

「力に飲まれる事を覚悟の上で、潔い人ですね」

「それならこっちも負けてあげるわけには、いかないのよね」


それから戦いは二時間ほど続いた。

日が見え始めた朝焼けの時間、その反動がやっと出る。


「ぐうっ、やっとですか…思ったより…長く持ちましたね…」

「力が…暴発する…」

「危険です!離れて!」

「最初からこのつもりで…爆撃も最後っ屁のつもりかしら」


そうしてアレクシスの力がその場で暴走。

だが消える前に訊かなければならない事がある。


「その前に答えなさい、天使様って何者?あんたになんでそんな力を…」

「ふふ、天使様は私の憎しみを肯定してくれた…ならばそれに応えるのが筋です…」

「その天使が何者なのか、知っているのね」

「それだけでも答えてもらいますよ」


アレクシスの言う天使様。

それはとても美しい姿の天使だという。


邪神の力を与えた天使、だが堕天使だとは決して言わない。

その天使はとても清らかな白さだったというのだ。


「とても美しい白…あなたたちに天使様に抗う術はない…お別れ、ですよ…」

「待ちなさい!最後に…」

「完全に力に飲まれましたね、消滅です」

「天使様、一体なんだって言うのよ」


なんにしても形はあれではあるが一応粛清は成功という事にした。

廃教会を出ると空にはトネオ空軍がロサニアに向けて飛び立っていた。


彼の残した最後っ屁。

憎しみが国同士の関係を歪にしたのである。


「どうなるのかしら」

「戦争は回避出来ても関係は最悪になるわよ」

「彼の憎しみがそうさせた、ですか」


とりあえず宿へと戻る。

理由は適当に言って誤魔化しておいた。


トネオ国内に非常事態宣言が発令されたのはそれから間もなくの事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ