減る蓄え
ヒルデを探すアレイシャ達。
だが手がかりはなく、手探りで探すしかない。
今は一つ隣の船着き場の街に来ている。
ここから領地内の島への船も出ているが、今は止まっているようだ。
「ここも今では静かなものね」
「船も止まってるし島には行けそうにないわね」
「倉庫街でもあるのですが、物資はどんどん減っていますからね」
倉庫街でもあるこの街には国の非常時の物資が多く蓄えられている。
だが長引く戦争により物資はどんどん減っている。
あとどれぐらい持つか、それは国民の生命線でもある。
「そういえば一応物資自体は入ってきてるのよね?」
「ええ、少しだけど第三国からの支援でね」
「それでもその支援も少なくて第三国の方でも国内の不満は高まりつつあるそうです」
第三国からの支援。
それにより物資はなんとか底をつかずに保てている。
だがそれでも国民全てに行き届かないのも現状なのだ。
そんな国内の状況は日に日に困窮していく。
それでもこの戦争が終わると信じて民は生きているのだ。
「そういえば戦争の今の状態ってどうなっているの?」
「今はバルディスタが少しだけ優勢だそうです」
「ただ敵国のコレアムも少し不穏な動きがあるとか聞くわよ」
コレアム、それはバルディスタの隣国だ。
前々から挑発行為を繰り返していた事もアレイシャは知っている。
恐らく三年前に自分を殺して今の状態を作ったのもコレアムの仕業だろう。
「それはそうとヒルデの情報を集めないと」
「そうね、まあ期待は出来ないでしょうけど」
「それでも何もしないよりはいいですよ」
そうして街の人達にヒルデの事を聞いて回る。
するとそれらしき人が二年前に宿で働いていたという話を聞く。
アレイシャ達はその話を確かめるべく宿へ向かう。
「ヒルデブルクさん?確かに二年前はそんな人が働いてたね」
「その人はどこに行ったか分かるかしら」
だが宿の主人は行き先までは知らないという。
そういえば仕事を辞めるときに国境を越えるための通行証を持っていたそうだ。
とはいえ国境を越えたという保証はないそうだ。
それに国境と一言で言っても複数ある。
戦争をしているのは西のコレアム。
そして他には北の国境と東の国境がある。
今物資の援助をしてくれているのは東の第三国。
仮に国境を越えたとしてもどの方角かは宿の主人には分からないそうだ。
それに今は戦争中でもある。
西の国境は当然通れないし、東と北も通るための検問は厳しくなっている。
相当信頼される人物かその証明がなければ簡単には通行出来ないはずだ。
「通行証を持っていて、でも行き先は分からない…」
「仮に通れたとしてもどうするんですか?」
「そうよ、国内でも広いのに隣国まで探すともっと大変よ」
アレイシャはそれでもそれに希望を託したかった。
誰か情報を掴んでいる人間はいないのか。
一旦街へ出て情報について考える。
「そういえばこの街には情報屋がいると聞きましたよ」
「情報屋が?でもお金はそんなに持ち合わせてないわ」
「あたしが色仕掛けで落とすとか」
流石にそれはアレイシャもセクネスも止める。
無理は承知で会いに行くだけ行ってみる事にはした。
「なんだい、情報が欲しいってか」
「ええ、手持ちは少ないけど」
「無理は承知の上です」
「一応相場だけ聞いてからね」
情報屋は情報の種類に応じて金額は異なるという。
今回は人探しだと言う。
「人探しな、それなら金貨三枚か銀貨十枚、それか銅貨八十枚だ」
「高い…それでもなんとしても稼いでくるから」
「アレイシャ!」
「そこまでする必要があるの」
その目は本気だった。
すると情報屋が一つ取引を持ちかけてくる。
「本気の目か、ならあるものを手に入れろ、それが手に入れば代金の代わりにしてやる」
「あるもの?それはなんですか」
「どうせ危険な話よね」
「それでも…何が必要なの」
情報屋が言うには街の近くに水の流れる洞窟があるという。
そこで紺色の水晶石を手に入れてくれば情報の代金の代わりにするという。
アレイシャ達はそれを飲みその洞窟へと向かう事にした。
だがその紺色の水晶石は貴重品とも聞いた。
それでも手に入れてみせる。
そうして街を出て洞窟へと向かう。
背に腹は代えられない今の現状に甘い事は言えないのである。