国民と情勢
トネオ国内を旅するアレイシャ達。
現在は小国の一つアンレムに来ている。
この国ではどの小国でも常に軍人を見かける。
それはこの国の情勢を意味しているのだろう。
「相変わらずなものね」
「エロイーズは軍人にいいイメージを持ってないのね」
「そういう人もいますよ、それが世界です」
「なんにしてもそれがこの国の情勢ですよ、文句ぐらい出ます」
トネオは北の国のロサニアと緊迫状態だ。
そのため国防に力を入れるからこその軍人である。
「でも軍隊がいなかったらとっくに攻め込まれてる、分かってるわよ」
「エロイーズって嫌いなものでも理由があれば理解は示すのよ」
「意外と精神的には大人な気がしますね、毛嫌いするだけではない辺り」
「この若さなのにね」
なんにしてもエロイーズは嫌いなものでもそれを知ろうとはする。
その理由さえ理解すれば嫌いなものでも理解するのだ。
それはスパイとして育てられたからこそのものなのだろう。
今はそんなものは感じさせないがアレイシャもそれは理解している。
個人の私的な感情だけで物事を判断するな。
大局を見るように教育されていたのだろうとアレイシャは感じ取る。
確かにエロイーズは軍人嫌いなのだろう。
だがその背景を知る事でそれを理解する。
そんな国の内情なども見た上での感情だろうと思っている。
個人的な理由に全てを委ねない、そういうものなのだろうか。
「ん?ご免、少し外すわ」
「エロイーズ?どこか行くのかしら」
「なら私が少し見ておくわ、みんなは適当に時間を潰してて」
「…分かりました」
そうして少し外すエロイーズをアレイシャが追う。
他のメンバーは適当に時間を潰す事に。
「さて、なにかしら」
「腑抜けたものね、あの優等生が」
どうやらエロイーズの同業者らしい。
ここで接触したという事は何か仕事か。
「任務よ、国王の側近のアレクシスという男を粛清しなさい」
「…そいつのやった事は」
どうやら粛清の仕事のようだ。
それを見ているアレイシャはエメラダ教のスパイは暗殺もやるのかと思っていた。
「罪状は国家転覆罪、国内では政治家近辺にも知られていない案件よ」
「それって以前聞いた内通者ってやつでいいの?」
国家転覆罪の容疑があるアレクシスという側近。
誰にも知られず闇の中でそれは動いているようだ。
そしてトネオ国内の何者かがそれを依頼したというところか。
それの役目がエロイーズに回ってきたというところだろう。
「了解、あいつらには知られずにやるわ」
「…それよりそこの女騎士、聞いてるんでしょ」
「流石にスパイ様の感覚は誤魔化せないのね」
アレイシャが姿を見せる。
そしてエロイーズの関係者は一つ提案を持ちかける。
「あなたもこのエロイーズと一緒に仕事をしなさい、仲間内では知ってるのよね」
「アレイシャを巻き込むつもり?」
「…私は別にいいけど、どうせお互いにその利用価値は理解してるもの」
それに対し関係者の女はアレイシャに言う。
エロイーズを信頼しすぎると寝首を掻かれると。
「今さらよね、その仕事は私とエロイーズでやるわ、その代わり彼女は私のものよ」
「…そうね、アレイシャは私のもの、それで引き受けるわ」
「仕事に期限は特にないわ、首都に着いたら確実に完遂する、それだけよ」
そう言い残しその女は姿を消した。
アレイシャとエロイーズは首都に到着したら仕事に移る事とする。
この事は他のメンバーには内緒にしておく事にした。
そのまま仲間の下へ戻る。
「あら、お帰り」
「遅かったのね、屋台のアイス制覇しちゃったわ」
「相変わらず食うわね」
「それで首都まではあとどれぐらいかしら」
エイルの話では首都まであと二つの小国経由らしい。
仕事の方はそれなら特に問題なく遂行出来そうだ。
「少し急ぎたいから次に急ぎましょ」
「それは別にいいけど」
「なら行きますか」
「ええ、頼むわね」
そうして次の小国へと飛ぶ。
首都ではアレイシャとエロイーズは闇の仕事がある。
その事は黙っておきつつ計画を考える。
アレクシスという政治家の粛清。
それはスパイと騎士のデコボココンビの共同作業である。