ギリギリの距離
トネオ国内を旅するアレイシャ達。
現在は小国の一つであるリィンネムに来ている。
この国は相も変わらず緊張が続いている。
それでも軍人達が頼られているのを感じるのだった。
「どこに行っても軍人がうろついてるのねぇ」
「エロイーズは軍人にいい思い出がないのかしら」
「確かにどこか不服そうな物言いですね」
「過去に軍人と何かあったとか?」
なんにしてもこの国は全ての小国に軍人が常駐している。
それはロサニアが頻繁にちょっかいを出す以上仕方ない措置なのだ。
「分かってる、分かっててもね」
「エロイーズ?」
「なんにしても平和なようで実は常に緊迫ですよ、この国は」
「そうね、見た目だけが平和に見えて」
この国はそれだけ軍が信頼されているのだろう。
だから国民は緊迫の中でも暮らしていけるのだ。
「あ、スクランブルね」
「何回この警報聞けばいいのかしら」
「仕方ないですよ」
「この国の現状って事なんですから」
だが今回の相手は今まで以上にギリギリを攻めている。
射撃こそしないが下手したらトネオ軍の飛空艇に接触する距離だ。
それを見て相手は少しずつ範囲を広げていると感じた。
ヒルデはそれを見て確実にトネオ軍の様子を窺っていると感じる。
戦争にだけはしたくないため手を出せないトネオ軍。
それを知ってなのか今まで以上に挑発を繰り返しているように見えた。
「あの距離まで攻めますか、下手したら国家間問題ですよ」
「あんな近距離を飛行して平気なものなの?」
「接触したら確実に無事では済まないわね」
「それどころか下手したら開戦の口実になりますよ」
そんな近距離を攻めてくるというのは今までにはなかった。
明らかに相手の方がそれを分かった上でやっている。
トネオが手を出せないと分かっていてやっているのだろう。
だがその我慢がいつまで続くのか。
トネオ側もいい加減に我慢の限界である。
そのうち撃墜するのではないかと思っている。
「まさかあんな近距離まで攻めてくるなんてね」
「確実に分かっててやってますね、確信犯ですよ、あれは」
「ロサニアは何がしたいのよ、戦争したいってわけじゃないでしょうに」
「恐らく国の軍部が国の上から命令を受けてるんだと思うわよ」
ロサニア軍は統率は取れているという。
つまり軍部の暴走という事ではないと思われる。
恐らく軍の上層部がそれを命じているのだろう。
そしてさらに上の国の首脳クラスが軍にそれを命じているのか。
なんにしてもまさかあれほどギリギリを攻めてくるとは想定外である。
トネオ政府もそれについての報告は受けるだろう。
どういった対応になるのか。
戦争にだけはならないと信じておきたいところである。
「あれが確信犯じゃなかったら軍部の暴走しかないのよね」
「少なくとも暴走ならもっと派手にドンパチやるわよね」
「ええ、なので確信犯で確定と思われます」
「本当になんというのか、この国もきな臭くなってきたわね」
先日聞いた国王の噂も気になっていた。
国に内通者がいるのではないかという噂。
そしてロサニアに国内の情報が漏れたという話。
そんなきな臭い状況に国はいつまで我慢出来るか。
アレイシャ達は首都を目指すわけだが、そこで何かありそうだ。
そう予感させるトネオの旅になる。
「とりあえず首都まではあと小国で四つね」
「首都で何かありそうな気がしてならないわね」
「まあ悪い予感は当たるって言うしね」
「やれやれですよ」
トネオ国内を取り巻く不安と緊張。
軍人が常駐している以上簡単に下手な真似は出来ないだろう。
だがどこか胸がざわざわする。
国王の噂や内通者の噂。
それらも含めこの国で何かが起こる。
そんな事を予感させる気はしている。
「とりあえず次の小国に向かいましょ」
「了解よ、すぐに飛び立てるわ」
「何もない事を願うばかりですね」
「不穏よね、本当に」
そうして次の小国に飛び立つ。
だがアレイシャ達もどこか不安を覚えていた。
すぐにではなくとも近いうちに何かがある。
そんな予感がしている。
何も起こらない事を願いつつ次へと飛ぶのだった。